2. 「AだけどBですね」と褒める
9割に当てはまる「フォアラー効果」

自己定義したものに強い愛情を持つ性質を、心理学では「自己定義欲求」と呼んでいます。そして自己定義欲求は、女性より男性のほうが顕著に強いことが知られています。

たとえば「占い」は男性より女性に人気があります。これは女性は「あなたはこうですよ」と他者に定義されたいから。ガイドブックに載っている人気のレストランが好きなのも、「これはいい」と他者が認めたものだからです。一方、男性は何事にも「オレにしかわからない」と思いがち。だから自分だけが知る「穴場の店」を持ちたがるのです。

人は「二面性の断定」を簡単に受け入れてしまう!

こうした性質を利用すると、単なるヨイショも大きな効果を持ちます。ポイントは「知られざる一面」を指摘すること。「すいません。僕、誤解していました」と前置きして、「クールな性格かと思っていましたけど、実は熱いんですね」「大胆なわりに、繊細なところもありますよね」と語りかける。この話法は誰にでも有効です。多くの人は、自分で定義できていなかった情報を与えられたと思って、「こいつ、わかってるじゃないか」と感心するはずです。

これは心理学で「フォアラー効果」と呼ばれています。かつてフォアという心理学者が、学生に適当な性格テストを実施し、その診断結果をランダムに返す実験を行ったところ、9割以上の学生が「分析は当てはまる」と信じました。「あなたはこういう性格だ」という断定、特に「あなたは外向的な一方、内向的な一面もある」という「二面性の断定」を人は簡単に受け入れてしまうのです。

注意点としては、「明るく見えるけれど、本当は暗くないですか」とネガティブな側面を指摘しないこと。ごく当たり前の二面性を告げることで、相手の「自己定義欲求」をくすぐりましょう。