「やるか、やらぬか」をシンプルに

私たちがやろうとしていたことは、極めてシンプルなことでした。理想と現実のギャップから問題点を明らかにし、それらを一つひとつ解決していく。それを続けていけば、会社は自然にいい方向へ変化し、利益が出るようになるはずです。しかし、過去何十年にも渡って委託賃加工の働き方に慣れてしまっていた社員たちに、今さら自分たち自身が付加価値を生み出す働き方に変えようと訴えても、すぐに変わるものではありません。「そんなことはできない」とか、「無理だ」とかいう言葉がすぐに口をついて出てきます。

「できない」のか、それとも「やらない」のか。「できない」と言うものの、本当は何かと理由をつけて「やらない」だけではないのか――。社員にもっとシンプルに考えてもらおうと、社内でさまざまな標語を掲げました。例えば、「仕事はすべてYES思考で取り組もう」。仕事とは、それまで取り組んでこなかったことや、できなかったことに挑戦することだと言えます。新しいことに取り組むとき、できない理由を考えるのではなく、どうすればできるかというYES思考で取り組んでほしいと考えたからです。

「やるのか、やらないのか」という言葉もよく社員たちに語りかけました。仕事とは、突き詰めていけば「右か左か」、「やるか、やらないのか」の二択でしかありません。理屈をあれこれ考えるよりも、もっとシンプルに考えれば、仕事はそれほど難しくはないのではないでしょうか。そんな想いを込めています。

会社を変えるエネルギーにするため、社員みんなで共有できる夢も掲げました。夢があれば、その夢を実現するために頑張れますし、不可能を可能にする力も生まれるはずだと考えたからです。約2500人いる社員が共有できる夢とは何か。社員の声に耳を傾けながらたどり着いたのが、「のびのび・いきいき・ぴちぴちと働ける会社にしよう」という夢でした。

「のびのび」とした自主性を持って、「いきいき」責任感を果たし、「ぴちぴち」の使命感を胸に仕事に取り組むことができれば、生きがいややりがいにもつながるのではと考えました。「のびのび・いきいき・ぴちぴち」という言葉には、いささか幼稚な響きを感じるかもしれませんが、社員全員で共有するには、誰にでもわかる簡単な言葉で表現することが大事だと思います。