マニュアル対応からは顧客を感動させるサービスは生まれない。ディズニーの“感動サービス”はどのようにして生まれるのか――。

感動サービスを生む情報共有の仕組み

『ディズニーを知ってディズニーを超える顧客満足入門』鎌田洋著(プレジデント社)

いかに顧客に感動をもたらすか。この問題を考えるとき、大いに役立つのが「情報」です。たとえば顧客から何かリクエストがあったとき、「どうすればリクエストに応えられるか」(ノウハウ)、「似たようなケースは他にあったか」(事例)、「このお客様とは、これまでどのような関係だったのか」(履歴)といった情報があると、ゼロベースで考えるより最適な答えにたどりつきやすくなります。

おそらくどの企業でも、ノウハウや事例、履歴といった情報は蓄積しているはずです。ただ、情報が組織的に管理されておらず、現場のキーマンが一手に握っている企業が少なくありません。「あの件についてはAさんがすべて知っている」というように、特定の人が情報を握りこんでしまうのです。

Aさんはオープンな人だから大丈夫、という考えは危険です。Aさんに情報を独り占めするつもりがなくても、病気で突然入院したり、他社に転職してしまったらどうなるでしょうか。Aさんが握っていた情報はそのまま消えてなくなり、活用できなくなるおそれがあります。

情報をCS向上につなげるには、情報を組織的に管理して、従業員が気軽にアクセスできる仕組みを整える必要があります。具体的にいうと、現場に溜まったノウハウはマニュアルに落とし込む、過去の事例は事例集としてまとめる、顧客情報はデータベースをつくるといった対応が必要です。こうした仕組みが用意されていてこそ、現場は情報を使いこなすことができます。

また、自社の想いを一つの情報として見なすと、想いを共有するための仕組みも情報の仕組みと考えられます。たとえば社内メールで経営者がメッセージを送ったり、社内報の職場紹介で従業員が想いを語ったりするのも、情報の仕組みの一つといえるでしょう。