2014年9月26日(金)

アセアン現地従業員も飛躍的に進歩している

PRESIDENT Online

著者
中沢 孝夫 なかざわ・たかお
福井大学経済学部 教授

中沢 孝夫1944年、群馬県生まれ。高校卒業後は郵便局に勤務。全国逓信労働組合本部勤務を経て立教大学法学部に入学し、93年に卒業。姫路工業大学(現兵庫県立大学)環境人間学部教授、福井県立大学経済学部教授などを経て、2014年より現職。中小企業経営論、ものづくり論、地域経済論などを専門とする。社団法人経営研究所シニアフェローを兼務。主な著書に『中小企業新時代』『グローバル化と中小企業』『中小企業は進化する』『中小企業の底力』など多数。

福山大学経済学部教授・中沢孝夫=文

相見積もりはフィリピンでもシビア

海外でも国内でも人の育ち方にそれほどの違いはないものだ。特別のエリートは別として、普通の職場の普通の勤労者は、とくに30歳を過ぎると同じ職場で長期に働く。欧米でも同じであり、ジョブホップが激しいといわれるアセアンでも、それぞれの企業努力もあって近年は長期雇用が定着しつつある。

例えば2013年の夏、フィリピンで15年前に三重県から進出した金型工場(従業員120人、日本人駐在員1人)で聞き取り調査をした。日本の本社は90人の規模だが、丁度、日本から出張中の社長さんの説明では、現地では15年勤続が何人もいて、もうCADも十分に使いこなすことができ、自分で図面を描くのは無理としても、図面があれば金型の製作ができる人間が育っている、という。

となると、日本で受注した金型の設計図データをフィリピンに送り、フィリピンで製作し国際宅配便で日本に納入することが可能となる。筆者の想定見積もりでは、5%程度のコストダウンは可能な筈だ。日本国内では全体のマーケットが拡大していないので、ここ十年以上、相見積もり(入札)はとてもシビアだ。ギリギリでせいぜい2%から3%の利益が乗せられるかどうか問われる。しかもコストダウン要求は年々厳しくなる。

成長期のアセアンでも昨今は日本からの大量の企業進出で、入札は厳しくなっているが、それでも日本国内より仕事量が拡大しているので、企業活動はしやすい。それゆえ、ひとたびマレーシア、タイ、といったところに進出すると、第二工場をインドネシアやベトナムなどに展開するケースが多くなる。「海外展開の学習能力」の結果である。

この三重県の金型屋さんも、昨年からインドネシアに第二の海外工場を立ち上げたが、立ち上げの現地指導の主力はフィリピン工場の技術者だ。フィリピン人の技術者も海外指導に張り切っているという。

ODA(政府開発援助)で「南・南協力」という言葉がある。インフラの建設などで、少し先を行く途上国が、新たにスタートする途上国に、助言・指導する仕組みである。技術や国力に格差がありすぎると、小さいけれど大切なことを見落とす事例が多い。しかし格差が小さいと、身近な基本的な問題の所在がよくわかるので、かえってうまくいくという側面がある。つまり工場の場合でいえば、技術や技能の移転の順序などが、日本人が説明するより分かりやすい側面がある。

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