2014年9月26日(金)

アセアン現地従業員も飛躍的に進歩している

「中小企業グローバル化」虎の巻 第3回

PRESIDENT Online

著者
中沢 孝夫 なかざわ・たかお
福井大学経済学部 教授

中沢 孝夫1944年、群馬県生まれ。高校卒業後は郵便局に勤務。全国逓信労働組合本部勤務を経て立教大学法学部に入学し、93年に卒業。姫路工業大学(現兵庫県立大学)環境人間学部教授、福井県立大学経済学部教授などを経て、2014年より現職。中小企業経営論、ものづくり論、地域経済論などを専門とする。社団法人経営研究所シニアフェローを兼務。主な著書に『中小企業新時代』『グローバル化と中小企業』『中小企業は進化する』『中小企業の底力』など多数。

福山大学経済学部教授・中沢孝夫=文

戒厳令による「秩序」のほうがマシ

20年ほど折にふれアセアンの取材をしているが、デモや政治的混乱に出会ってもあまり驚くことはない。日本のテレビ画面は、流血の惨事や、軍隊や警察のものものしい警戒ぶりを報道するが、それは「絵」になるからであって、現地に滞在していると、普通の庶民の暮らしや街のたたずまいに大きな変化はない。この7月にもバンコクとその周辺を取材したが、戒厳令下のバンコクの日常は平穏だった。バンコク名物の夜の姫君たちも元気はつらつとしていた。

みな慣れているのである。軍部による戒厳令による政権奪取は、欧米流儀の民主主義には外れているが、現地は「無秩序」より「秩序」のほうがマシだ、といった気分が蔓延している。たしかに、イスラム原理主義などが荒れ狂う中東などと比べると、別天地である。

タイの場合、支持基盤の異なる政党間の対立は根深いが、庶民の間では、「軍人は選挙で選ばれているわけではないから、固定資産税や相続税などを導入し、所得の再配分が可能となり、貧しい人にとって世の中がよくなるのではないか」などという意見すらある。なるほど強権のほうが決定しやすいということか。

このように、遠くから見ているのと、現地で見ているのでは、状況は異なっていることが多い。「グローバル化」などもその典型である。

筆者なども15年前、20年前にインドネシアなどアセアンを歩いていた時は、「本当にこの国に製造業が根づくのだろうか」など思ったりもしたが、マレーシアやタイなどは、今や堂々たる「中進国」の山脈を形成しつつある。その原因は日本から進出した企業を中心とする人材の育成と、技術・技能の移転・向上にある。

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