2014年7月25日(金)

たった13人の会社が海外進出を軌道に乗せるまで

「中小企業グローバル化」虎の巻 第2回

PRESIDENT Online スペシャル

著者
中沢 孝夫 なかざわ・たかお
福井大学経済学部 教授

中沢 孝夫1944年、群馬県生まれ。高校卒業後は郵便局に勤務。全国逓信労働組合本部勤務を経て立教大学法学部に入学し、93年に卒業。姫路工業大学(現兵庫県立大学)環境人間学部教授、福井県立大学経済学部教授などを経て、2014年より現職。中小企業経営論、ものづくり論、地域経済論などを専門とする。社団法人経営研究所シニアフェローを兼務。主な著書に『中小企業新時代』『グローバル化と中小企業』『中小企業は進化する』『中小企業の底力』など多数。

福山大学経済学部教授・中沢孝夫=文

念入りな下調べで致命傷を避ける

企業活動にとってもっとも大切なことの一つは、経営者の「決断」である。リターンを求めるためにはいつもリスクが伴うからだ。それゆえ事前の研究・調査の徹底性と慎重さが必要だ。とくに経営資源の限られた中小企業の場合はなおさらである。設備投資、新しい領域への進出……、悩みは尽きない。それが経営者の醍醐味であるといってもよいにしてもだ。

北陸・越前市でビニール袋など特殊包装資材の加工販売をしている豊ファインパックの田中利希也社長は、この春、久しぶりに地元の経営者仲間とゴルフにいき「田中さんが最近は仕事熱心であることがスコアにあらわれている」とからかわれたという。さんざんの出来だった。

この4年ほど田中社長は、海外展開に追われていた。そして今でも追われている。4年前、たまたま筆者の本を読んだ田中さんが大学の研究室に訪ねてきた。マーケットの拡大の難しさ、人材育成のことなど、あれこれ話しているうちに、「今度タイに進出している中小企業の聞き取り調査に行くけど、よかったら一緒にどうぞ」と誘った。「是非」ということで、バンコク郊外の日本から進出した精密切削加工や熱処理の工場を一緒に訪ね、現地での採用や営業の現実の聞き取りをした。

それから2カ月後、ベトナム・ハノイの工場の調査にも同行した。今度は、工場の設備の設計・製作のメーカーと、浄水器の組立工場だった。ここでも現地人の採用や、技術移転(仕事の教え方)、賃金など処遇方法、営業の方法、立地の選定とその価格、などを丁寧に取材した。

その後、田中社長は、今度は自分でタイやフィリピンなどを、公的なセミナーを利用したりしながら歩いてみた。田中さんの会社は社員13人の典型的な中小企業である。このサイズで海外展開を図る事例は少ない。リスクが大きすぎるのだ。しかし田中さんはあえてフィリピンへの進出を決断した。2012年の秋のことだった。

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