「ヱビス」のブランド価値がどんどん上がっていくことが一番重要だと思っている、と時松。「凄い機能がボーンと出てきたから市場がガラッと変わるような業界ではない。まずは基本をきちんと。特に今年は全体としてのヱビスの広告のボリュームも3割程度増やしています」。

「ヱビスはすでに100年以上売っているビールであり、生まれたときからプレミアムなのです。同時にレギュラービールの1.5倍もの長期熟成をさせることで、深いコクを出している。100年を超える歴史とそこから生まれた文化、そして独特の深いコクは、他社さんには絶対に真似のできないものです」

時松によれば、今年のテーマはそのものズバリの「歴史とコク」。夏のギフト限定でアルコール度数が7%と高く、オンザロックで飲めるほどコクのある「夏のコク」を投入する。

ヱビスはここ数年、こうしたエクステンション商品をいくつも出している。現在も「シルクヱビス」「ヱビスプレミアムブラック」「薫り華やぐヱビス」コンビニ限定の「ロイヤルセレクション」があり、秋からは「琥珀ヱビス」が期間限定販売される。

「歴史ゆえに、敷居が高いと感じている方もおられると思うのです。一度ヱビスを飲んでみたいという気持ちはあっても、そんなにポンポン手が出るものではない。そうした方にエントリーしていただくために、ヱビスの側から新しい商品で情報発信をしているわけで、最終目的はやはり、金ヱビスをお飲みいただくことにあります」

これらのエクステンション商品は、プレモルにとっての「香るプレミアム」に似て、主ブランドたる金ヱビスへの導入役というわけだ。

「ビール類全体がコモディティー化していく中で、ビールそのものの価値をどう上げていくかは業界全体のテーマでもあります。サッポロビールとしてはヱビスにリソース(経営資源)を集中させて、広告のボリュームも3割ほど増やしていく予定です」

その甲斐あってか、今年のヱビスは昨年の「2割増し以上」の売れ行きで推移しているという。