まずは自己分析。アピールするポイントを定める

この連載では、たびたびにわたり「パフォーマンス心理学」の技法は「相手に自分のことを上手に伝える」うえで非常に有効である、ということをお伝えしてきました。

今回はその総仕上げとして、パフォーマンス心理学の原理原則であり、出会った人を必ず自分の味方にしてしまう、強い自己アピールの仕方をご紹介します。

それは「フレーム理論」です。

「フレーム」とは額縁、枠組みです。モナリザの絵を思い出してください。ルーブル美術館で観るとわかりますが、モナリザは意外に小さいのです。もしあの絵が額縁なしで、そのまま廊下にピンナップされていたら、人々の注目を集めるには時間がかかってしまうことでしょう。

人は皆、フレームに収められたところだけに注目し、フレームの外は忘れてしまいがちです。人間には、そんな受け止め方の傾向があるのです。

それを利用したのが、パフォーマンス心理学の「フレーム理論」。あなたが持っている長所や実力の中で、特に強調して見せたいと思う部分をフレームに入れてクローズアップし、あとの部分はちょっとフェードアウトしておくことです。

相手はまず、あなたがクローズアップしたフレームの中だけを、強いインパクトで受け止めます。そこで注意したいのが、フレームに入れるということは、自分にとって長所でもない部分をアピールしたり、不相応な実力があるように見せたりすることではない、ということです。

例えばあなたが、判断力は人並みで、協調型の人間だったとしましょう。ただ、新たに会うクライアントには、自分の中のありったけの決断力を最大限にアピールしたい。そんなときには、髪形をビシリと決め、キリッと口元も引き締め、アイコンタクトを最大に。声のトーンは、文末を「……」と尻切れトンボで終わらせずに完結させ、イントネーションも下降調で区切ります。

ここであなたがフレームに入れたのは、「決断力があり、キリッと引き締まった自分」です。

ただし、実際のあなたの売りは協調性だけで、実は決断力がスルリと欠如している場合、あなたにないものをフレームに入れてしまうと、どこかで自己表現の統一性を欠きます。ふとした弾みに、「本当の自分」が露呈するからです。