2014年9月3日(水)

止まらない「アナ雪」の快進撃。今、人を動かすカギとは

PRESIDENT 2014年9月15日号

著者
本田 哲也 ほんだ・てつや
ブルーカレント・ジャパン代表

1970年生まれ。セガを経て世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラード日本法人入社。2006年に同社のマーケティングPR部門が分離独立したブルーカレント・ジャパンの代表に就任。『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(共著)、『戦略PR』『その1人が30万人を動かす!』など著書多数。

ブルーカレント・ジャパン代表 本田哲也 構成=島影真奈美
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心の奥底の本音を的確にとらえたアナ雪とLINE

世界的大ヒットとなったディズニー映画「アナと雪と女王」の快進撃が止まらない。推定興行収入260億円、累計動員数は2000万人に迫る勢い。MovieNEX(ブルーレイ、DVDなどのパッケージ)は予約の時点で100万枚を超え、発売4週という映像作品史上最速でダブルミリオンを突破した。通常、パッケージが発売されると観客動員数が下がるものだが、動員数も順調に推移。7月22日の時点でも全国動員数で8位にランクインした(興行通信社調べ)。

なぜ、「アナと雪の女王」は大勢の人々を動かしたのか。僕は「解放を求める心」をとらえたからではないかと思う。人を動かすには、人間の心の奥深くに潜在的に眠る「本音」――インサイトに迫る必要がある。インサイトは「洞察」などと訳されることが多い。人間がある行動をとるにあたっての“理由になっていない本音”のようなものをイメージしていただくとわかりやすいだろう。

ディズニーは「アナと雪の女王」を日本で公開するにあたって、初期ターゲットを「大人の女性」に定めた。では、日本における大人の女性のインサイトとは何か。現在の日本女性の現状に目を向けると、働く女性が増え、晩婚化や晩産化が進んでいる。内閣府の調査によると、25~29歳の約6割が未婚という状態がこの10年続いており、第1子を出産した平均年齢は30.3歳。その理由として男性の回答として最も多かったのが「経済的余裕のなさ」。しかし、女性のトップは「独身の自由さを失いたくない」であり、続いて「仕事や学業に打ち込みたい」がランクインした。日本女性の多くが「もっと自由に自分らしく」と強く前向きな思いを抱き、だからこそ職場や家庭の悩みやストレスにさらされていると推察される。“アナ雪”のヒロインたちが高らかに歌い上げる「Let It Go」は「ありのままの自分で生きたい」と願う現代女性の本音そのものだった。

今や世界のユーザー数が5億人に迫る「LINE」も深いインサイトの読み込みに基づき、立ち上げられた。2011年の企画当初、最終検討されていたのはメッセージアプリと写真アプリだったという。しかし、そこに起こったのが東日本大震災だった。震災をきっかけにネット上でのコミュニケーションに対する人々の本音は大きく変化する。それまでの「新たな出会いを求める気持ち」よりも「大切な人とのコミュニケーションを大事にしたい」という気持ちに変わったのだ。この変化を実感した同社はメッセージアプリの開発を本格化した。

他社のソーシャルサービスでは、リアルにつながっていない人も“友達”として扱われる。しかし、LINEは「電話番号を知っているリアルな人間関係」を軸に定めた。その後、LINEはご存じのように爆発的にユーザー数が増え、日本国内だけでも利用者は5000万人を超える。じつに日本人の2人に1人がLINEを利用している計算になる。インサイトを正しくとらえ、機能や仕様を決定したからこそ、人が動いたのだ。

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