一度離れた世代が戻る「ノスタルジック消費」

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2013年アイスクリームの5大ブランド

現在、家庭用アイスクリームで年間売上高100億円超の「メガブランド」は7つ。大半は昔からある商品だ。

12年12月に放映された人気番組「お願い!ランキングGOLD」(テレビ朝日系)では「アイスNo.1決定戦」が行われ、消費者1万人のアンケートをもとに人気ランキングが決まった。そのときの顔ぶれも、エッセルスーパーカップやガリガリ君などのロングセラーブランドが上位を占めた。

単一ブランドで最強なのが、「エッセルスーパーカップ」だ。

「20年前の発売時は、当時の150ミリリットルで100円の常識を打ち破ろうと、200ミリリットル以上の容量で勝負した。濃厚で量も多い商品にするため、乳脂肪ではなく植物性脂肪13%と卵黄脂肪で旨みを出したのです」(明治・服部芳和さん)。

容器に記された表示区分は乳脂肪分8%以上の「アイスクリーム」ではなく、乳脂肪分の少ない「ラクトアイス」だ。乳製品メーカーでありながら、乳へのこだわりを捨ててヒット商品につなげた。

(左)明治 アイスクリーム営業部マーケティンググループ 服部芳和(右)森永乳業 冷菓マーケティンググループ 蓮沼裕二

日本初の一口アイスとして誕生した「ピノ」(76年発売)は40年近く人気が続く。レギュラーサイズは当時も今も1粒10ミリリットルの6粒入りだ。「身近さと安心感の強いブランドですね。子供時代に食べ、お酒の味を覚えて一度離れた人も、最近は戻ってこられます」(森永乳業・蓮沼裕二さん)。

多くの世代に親しまれるエッセルとピノは、大胆な味覚提案がしにくい。「主原料のバニラフレーバーを少し変えただけでも敏感なお客様にはわかってしまう」(服部さん)、「基本は滑らかな味と口どけのいいチョココーティングのバランス。この部分は崩せません」(蓮沼さん)という優等生的なブランドが、大人のノスタルジック消費をかき立てる。