行政サービスの差が老後の生活に直結

そうした傾向は、リタイア後の住む場所選びでも変わりません。田舎暮らしにぼんやり憧れを抱いているかもしれませんが、実際にいままで築いてきた地縁・血縁を切ってまで不便な郊外に移り住む人は少ない。たいていの人は現役時代と変わらない暮らしを望むのです。

(PIXTA=写真)

生活に必要な基盤は、現役世代とリタイア世代で大きく変わらないことも理由の一つでしょう。リタイア後の暮らしというと、「温泉のあるところがいい」「水がおいしい町がいい」といった付加価値に目がいきがちですが、買い物のしやすさや交通機関など、基本的な生活インフラが整っていないとプラスアルファの付加価値も楽しめません。生活の基盤になるものが快適かつ便利かどうか。そういう視点で住む場所を選ぶと、やはり現役時代と同じく、都心に比較的近くて生活利便性が高い町が選ばれやすいようです。

こういった点を踏まえたうえで、実際に住み替えを考え始めたら、その町の行政についてもぜひチェックしてください。現役時代はあまり気にしていないかもしれませんが、行政サービスは市町村によってかなり差があります。

私の母はアンケートで首都圏2位に選ばれた神奈川県横浜市に住んでいますが、高齢者は市営バスの無料パスがもらえるため、市内の移動に大変重宝しているそうです。一方、規模の小さい自治体は公営バスの本数が極端に少なかったり、規模が大きくても、大阪市のように無料の敬老パスを有料化する自治体もあります。

差があるのは公共交通サービスだけではありません。老後の生活に大いに関係する介護サービスや、ごみの集配のように日々の暮らしに直結する行政サービスも自治体によって違いがあります。

こうした違いを左右するのが自治体の財政状況なのです。簡単にいうと、人や法人が多くて税収の多い自治体ほど手厚い行政サービスを受けられて、逆に人や法人が少ない自治体ほど行政サービスが頼りない。住みやすいのは当然、前者です。自治体の財政状況はHPで公表されているので、事前の確認は必須。恒常的な赤字になっていたり、地方交付税交付金を大量にもらわないとやっていけない自治体は、行政サービスが悪化する可能性があることを認識しておく必要があります。ただし自治体の財政状況がいいからといって、その自治体内ならどこでも住みごこちが同じわけではありません。

たとえば東京都世田谷区は、東急線沿線と小田急線・京王線沿線で雰囲気が違います。東急線の二子玉川や上野毛エリアは住宅街としてのグレードが高めですが、小田急や京王線沿線は庶民的です。また東京都大田区(首都圏7位)でも、田園調布や山王のような高級住宅地と、海側に近い蒲田エリアでは、町の様子が違います。

(構成=村上 敬 写真=PIXTA)
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