2014年7月9日(水)

ホリエモンと今の起業家、どこが違うか?

PRESIDENT BOOKS /PRESIDENT Online スペシャル

著者
田原 総一朗 たはら・そういちろう
ジャーナリスト

田原 総一朗

1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)に移り、76年退社してフリーに。テレビ朝日系の「朝まで生テレビ!」「サンデープロジェクト」など、人気番組の進行役を務める。『原子力戦争』『通貨マフィア戦争』『日本の官僚』『電通』『テレビと権力』など著書多数。

田原総一朗=文 宇佐美雅浩=撮影
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権力をDISるのはもう古い

そこに颯爽と登場したのが、堀江貴文という起業家だ。堀江はアイデアがなく硬直しきった社会に、鮮烈なる発想で切り込んでいった。これまでの常識をものともしないやり方は、荒々しく(もっといえば行儀が悪く!)、とても新鮮だった。ただ、堀江の過激なやり方はエスタブリッシュメントから反発を受け、結果的には検察に「悪」と判断されて実刑を食らった。彼に足踏みをさせたことは、日本にとって大きなマイナスだったろう。

ただ、僕はそこで新しい風が吹きやんだと考えていない。堀江とはまた違う魅力を持った、ポスト・ホリエモン世代の若い起業家が続々と登場しているからだ。

ポスト・ホリエモンの起業家たちには、堀江と明らかに違う点が3つある。

まずポスト・ホリエモンの起業家に、おとなたちを挑発するような荒々しさはない。乱暴な言葉遣いはしないし、物腰もやわらかだ。

2つ目は、起業のスタイルだ。堀江の時代の起業家は、いきなり自分で会社をつくってベンチャービジネスをやった。一方、ポスト・ホリエモン世代は、まず企業に就職する。その会社で一生を終えようと考えているわけではない。サラリーマンをしているあいだにビジネスのノウハウや生きるための知恵を身につけ、そのうえで独立する。じつに堅実でスマートだ。

3つ目として、ROE(株主資本利益率)よりソーシャルインパクトを重視していることも特徴だろう。彼らは自分が儲けることにあまり関心がない。それよりも新しい事業で社会を変えることに喜びを見出している。

行儀が良くて堅実、そして社会を変えたいという理念で動いているというと、優等生すぎて物足りなく感じる人がいるかもしれない。じつは僕も最初はそのように誤解していた。

ところが実際に彼らに会って話を聞いてみると、堀江に負けず劣らず発想は強烈で、個性も強いことがわかった。目立つとおとなたちを刺激してしまうので戦略的に行儀よくしているだけで、やはり彼らも、生きるか死ぬかのビジネスの世界で泥にまみれつつ、すさまじい勝負を繰り広げていた。

ポスト・ホリエモン世代の一人、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹は、こう言った。

「昔は力強い体制が悪いことをしていて、その悪に対して正義の市民が火炎瓶を投げるという構図があった。でも、いまは倒すべき悪がいない。権力をDISるより、僕たちで解を見つけて提示していくほうが、問題を生んでいる構造を早く動かせます」

たしかに全共闘がゲバ棒を持って戦った時代と違って、いまは総理大臣が1年ごとに代わり、経営者もリストラと倒産で青色吐息だ。政治・経済の停滞を幼いころから見続けてきたポスト・ホリエモン世代にとって、権力は倒すべき敵でも、頼りになる存在でもない。つまり彼らは既存の勢力に勝てないから戦わないわけではなく、「既存のものに期待しても無駄だから、自分たちでやるしかない」と、おとなたちをハナから相手にせず、自ら道を切り拓こうとしているのである。

僕は、若者たちのこうした動きをとても頼もしいと思う。次世代の起業家が、自分の事業を通して世の中をどのように変えていくのか。非常に楽しみにしている。

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