「学歴と英語力を買われたのかもしれません」

1980年に、東北大の法学部を卒業した。就職活動の時期である3年の秋から4年の夏は、アメリカのカリフォルニア大学のサンタバーバラ校に留学していた。キャンパスには、ベトナム戦争(75年終結)の余韻が残っていたという。

帰国した4年の秋、多くの学生が就職活動を終えていた。出遅れた形となったが、都市銀行の上位行だった住友銀行(現・三井住友銀行)から内定を得た。

「学歴と英語力を買われたのかもしれません。体育会のテニス部の主将を務めていたことも、よかったのかもしれないですね。東北大法学部の学生の中には、司法試験の勉強で就職活動を始めるのが遅れた者もいます。それでも、大きな金融機関から内定をもらっていました。新卒の就職活動では、学歴が重要な要素の1つなのかもしれませんね」

入行後、20代から30代にかけては、支店や本店の国際部門、企画部で金融商品の開発などに関わった。語学力が高いこともあり、アメリカの銀行との合弁による投資顧問会社の設立にも参加した。特に通訳や翻訳に携わった。

その後、海外勤務となる。ベルギーのブラッセル支店(1989年~93年)で主にM&A業務、不動産金融、証券業務などに関わる。ニューヨークの信託子会社(93年~96年)では、アメリカの年金制度を含む、信託業務全般に取り組む。

住友銀行に在籍しているとき、特に昇進・昇格、配置転換などで学歴を感じることはほとんどなかったという。

「昇格の速い人は、東大卒というだけで優遇されているとは思えませんでした。東大卒は相当に多いから、それだけではセレクトにならないでしょう。むしろ、人事部はそれぞれの行員の働きとか、実績、性格などをよくみていると思います。当然、上司からの評価も人事部に伝わっているはずですが、それだけですべてを判断することはしていなかったでしょうね」