営業の仕組みとしては、一つの営業所のサイズが15人や20人近いところもあったのを、3年前に約10人単位のものに変え、営業所数を倍増しました。また、所長はMR(医薬情報担当者)へのフィードバックやフォローアップに専念する代わりに、プレーヤーとしての個人の成績責任を問わない形をとるようにしました。さらに、所長には比較的若い、チャレンジングな人材を登用するようにしています。

アメリカの軍隊では、最前線の兵士たちがどんなに予測困難な状況に遭遇しても、国益に沿うような判断ができ、行動がとれるようにトレーニングしています。それは組織でも一緒です。

軍隊ほど緊迫した局面ではないにしても、営業の第一線ですばやい判断ですとか、すばやい行動が求められるケースは多い。それをひとつひとつ「大本営」へ上げていたのでは、スピードで負けます。

大本営のほうも、直接現場を見ているわけではありませんから、判断を間違うケースもある。これからは、できるだけ現場で動くということがより必要になってくるでしょう。

(06年10月2日号 当時・社長 構成=枝川公一)

楠木 建教授が分析・解説

大本営である本社・本部の決定よりも、最前線の現場の判断のほうが正しいケースはままある。マーケットや顧客の変化を敏感に感じるのはやはり現場なのである。武田薬品の長谷川氏が営業の第一線の判断を重視するのは、「本質は細部に宿る」ということをよくわかっているからだ。

一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)教授 楠木 建
1964年、東京都生まれ。92年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。2010年より現職。著書に『ストーリーとしての競争戦略』『戦略読書日記』。