10.ファーストファクター

イライラや怒りには、そのもととなる第一の感情があります。たとえば、連絡もないまま娘の帰りが遅いとき、父親はイライラして、「帰ったら叱りつけてやろう」と考えるかもしれません。このときの第一感情は“心配”です。それがわかれば、娘を怒鳴るのではなく、心配していることを伝えて、遅くなるときには連絡するように諭せばいいのだと気づくはずです。

このように、不安や悲しみ、ストレスなど、怒りのもととなる第一感情がわかれば、怒鳴ることなく、親の気持ちを伝える方法がわかります。

自分に合うコツを1つ使えばいい

それぞれのスキルをどう使い分ければいいかもよくわからない、と思う方もいるだろう。しかし、「そんな心配は無用」と嶋津氏。

「怒らないスキルは、シチュエーションに応じて使い分けるものではなく、気に入ったものを1つ使い続けるだけで効果があります。1つを使いこなせるようになったら、必要に応じて、スキルの数を増やせばいいのです。大切なのは、使い続けること。繰り返し使うことで、感情系に流されにくくなり、思考系を活性化する力を伸ばすことができるからです。それから、『子供は親の言うことを聞くものだ』という心の枠をなくして、子供には自分の言っていることのほとんどが伝わっていないのだと理解しておきましょう」それだけで、イライラの大半は抑えることができ、粘り強く何度も話す必要があると考えることができると言う。

常に笑顔を絶やさない嶋津氏だが、「私はかなりの短気です。でも、怒りにまかせて怒鳴り散らしても、良いことは全くないことに気づいてから、変わろうと思いました」。イライラや怒りを感じる頻度は、接触回数の多さに比例し、怒りは上から下に流れるため、母親にとっていつも身近にいて、自分が産んで育てた子供は、イライラや怒りを特に感じやすい対象になりやすい。

「私にも息子がいるので、お母さんたちが子育て中にイライラしてしまう気持ちはよくわかります。それに親が子供のために怒るべき場面というものも確実に存在します。そのため、怒ることのすべてを否定するつもりはありませんし、怒りを無理やり抑えつける必要もないと思います。しかし、怒りの8割は、相手のためを思ってのことではなく、怒りを相手にぶつけてスッキリしたいなど、自己満足のためです。怒りを上手にコントロールする“怒らないスキル”を身につけ、その理由が自己満足の場合は怒りをそらし、残る怒るべき場面では、その怒りを上手に表現することが大切なのです」

嶋津良智
リーダーズアカデミー学長、日本リーダーズ学会代表理事、日本アンガーマネジメント協会理事。早稲田大学講師。『怒らない技術』『子どもが変わる 怒らない子育て』がシリーズで80万部を超え、国内外で「おこらない子育てセミナー」を開催する。