2014年4月4日(金)

退却できない奴はケチだと思え -ソフトバンク社長 孫 正義氏

「正しい悩み方」とは何か[1]

PRESIDENT 2011年1月31日号

著者
楠木 建 くすのき・けん
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授

楠木 建1964年東京生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。日本語の著書に、『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『知識とイノベーション』(共著、東洋経済新報社)、監訳書に『イノベーション5つの原則』(カーティス・R・カールソン他著、ダイヤモンド社) などがある。

執筆記事一覧

一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)教授 楠木 建=総括、分析・解説 小川 剛=構成
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 江戸学の第一人者である法政大学の田中優子教授によれば、江戸時代の鎖国は新井白石が銀の輸出禁止令を出して貿易を制限したことに始まり、約30年かけて鎖国体制を築いたという。室町、戦国期は交易によるグローバル化が進んで経済活動が非常に活発化した時代だ。そこから一転、国を閉じて世界から孤立することで失うものは計り知れない。実に多くを捨てながら、しかし徳川幕府は平和と秩序という大きな実を取った。
 決断するということは何かを選ぶということである。そして何かを選ぶということは、別の選択肢や可能性を捨てるということだ。優れた決断というのは、何を失うか、何をしないかをはっきりさせることだと私は考える。
 何かを選べば、何かを捨てなければならないという二律背反の関係を「トレードオフ」という。江戸時代も明治期も日本人はトレードオフの決断をしてきた。決断できないマインド設定になったのは、戦後の高度成長期以降からだろう。あらゆるものが右肩上がりだったから、先送りするうちにほとんどのことは時間が解決した。選ばなくても済んだのである。あらゆる局面でトレードオフの決断を迫られるようになっている今、かつて日本人が纏っていた決断のセンスを思い起こさなければならない。

退却できない奴はケチだと思え -孫 正義

人生4度目の大勝負。ブロードバンドへの参入です。当時、日本のインターネットは先進国一遅く、世界一高かった。私の人生のテーマはデジタル情報革命なのだから、このままにするわけにはいきません。私は日本のインターネットを世界一速く、安くしてやろうと決めたのです。そして、本当にそれを実行しました。数年前、どこの駅前でも「Yahoo!BB」と書かれた赤い袋がタダで配られていたのは記憶に新しいのではないでしょうか。

アメリカの10倍で世界最高速なのに、NTTの8割引きで世界一安値。当然申し込みは殺到し、これを発表した日、一晩で100万件もの申し込みがありました。日本のインターネットが変わった、ブロードバンドの夜明けだったと思います。

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