タレント、エッセイスト 小島慶子

1972年生まれ。タレント、エッセイスト。第36回ギャラクシーDJパーソナリティー賞受賞。95年より15年間、放送局アナウンサーとして勤務。2010年に退社後は、ラジオ、テレビ、雑誌など多様なメディアで活躍中。『女子アナ以前』(大和書房)、『絵になる子育てなんかない』(養老孟司との共著、幻冬舎)、『女たちの武装解除』(光文社)、『失敗礼賛』(KKベストセラーズ)など著書多数。最新作『コスプレ上手は、仕事上手!』が集英社より発売中。2人の男の子の母親でもある


 

初めて自分のお金でお寿司を食べにきたのが、「廣金」さんでした。ある夜、仕事帰りにお店の前を通りかかって、ランチをしたことがあるのを思い出したんです(注・現在は夜のみ営業)。その頃はまだ2人の息子も小さくて、子育ても大変な時期。そのうえ仕事もがんばってるし、「たまには1人でお寿司くらい食べてもいいんじゃないか?」という気分になったんですね。そこで家で子供たちを見てくれている主人に、「私は今日、1人でお寿司を食べて帰ろうと思うのですが、いいかな?」と電話で許可をもらい、のれんをくぐりました。

すると隣に少々酔った年配の女性客がいて、「いいわね、あなたは。私の若い頃は女が1人で寿司屋に入るなんて考えられなかったのよ」と言われてしまいました。でもそれが嫌味じゃない。このお店は住宅街にあるので、「あなたもご近所さんでしょ」みたいな親愛の情を示してくれている感じ。そんな気どらないお店ですから、女性の一人客もよく見かけます。

和食が好きで、自宅では干物を焼いたり、ひじきや切り干し大根を戻したりすることが多いですね。干物の素晴らしいところは、火加減さえ間違えなければ、たいていおいしくできるところ。そして最近の魚焼き器の素晴らしいところは、両面同時に焼けるので、途中でひっくり返さなくていいから、魚が崩壊しないで済むところ(笑)。

だんだん子供も手がかからなくなってきたので、今年は学生時代に習っていた茶道をまた始めたいですね。ただ、私ももう40代なので、自分自身が侘び寂びの域に……。なんて、つい話を盛り上げようとする今の自分をつくったのは、10代を過ごした女子校での6年間かも。学校にはみんなの憧れの的の、「読モ」(読者モデル)みたいな子がいるでしょう。でもそんな華やかな子はせいぜいクラスに2、3人。あとはアニメ研究会の子とか、1年中テニスばっかりしてる子とか、すごく成績のいい子とか。私はそのどれでもなくて、ちょっと居場所がない感じだったんです。そこでみんなが目指さないポジションを探した。それが「盛り上げ役」だったというわけです。

女子校って、男子の目がないから自由なんですよ。授業中、新任の「イシデ先生」の名前を覚えられないふりをして、「田中先生!」「あ、違う。鈴木先生!」しまいには「ロドリゲス先生!」とか、クラス一丸となってふざけてみたり。

「男というものは自分の話に笑ってくれる女は好きだが、盛り上げ役の女が好きなわけではない」と気づいたのは、ずいぶん後になってから。もしお嬢さんをモテる女にしたいなら、絶対に女子校に入れてはいけません。これ、私の持論です。