表を拡大
食道がん

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学に3年間留学したのは、「急性肺障害」の研究。食道がん術後の合併症として最も重要な術後肺炎や敗血症の病態を解明し、診断・治療法を開発するためだった。

07年、食道がん、胃がんの専門医、北川教授が誕生した。北川教授がまず行ったのは――。

「一般・消化器外科は、それまで食道、胃、大腸、肝胆膵、移植、血管、乳腺の7つのグループに分かれていました。その食道と胃のグループを一緒にしました」

そこには日本の胃がん、食道がんの将来を見すえた計画があった。日本の胃がん、食道がんが大きく変わることが推測されるからである。

「欧米では、食道がんも胃がんも、食道と胃の接合部に集中しています。それは、欧米人は肥満が多く『胃食道逆流症』の人が多い。食道と胃の接合部の慢性炎症が腺がんの発症につながるのです。では、日本人はどうか――。これから日本でも肥満症が増えて胃食道逆流症の人が多くなります。一方、ピロリ菌の保菌者は減少するので、胃の出口、幽門側のがんは減っていきます。日本でも欧米のように食道と胃の接合部のがんが徐々に増えてくると予想されます。食道と胃のグループが分かれていてはこれから増加する食道胃接合部がん治療の最適化を推進することはできないと思います」

グループが一緒に歩み“体にやさしい治療”のみならず、“集学的治療”の実践、研究にも力を注いでいる。集学的治療は外科手術、化学療法、放射線療法をいろいろ組み合わせて行う治療。現在、北川教授は日本の代表的な外科医、腫瘍内科医、放射線科医が合同で食道がんに対する新しい集学的治療を開発する多施設共同研究グループの代表を務めている。