2013年12月10日(火)

「女性活用すれば業績アップ」の大ウソ

しごとの未来地図

PRESIDENT 2013年12月30日号

著者
鶴 光太郎 つる・こうたろう
慶應義塾大学大学院 商学研究科教授

鶴 光太郎1960年生まれ。東京大学理学部数学科卒業。オックスフォード大学Ph.D.(経済学)。経済企画庁、OECD経済局エコノミスト、経済産業研究所上席研究員などを経て、2012年4月より現職。安倍政権の規制改革会議・雇用ワーキンググループ座長を務める。

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慶應義塾大学大学院 商学研究科教授 鶴 光太郎 構成=宮内 健 写真=Getty Images
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女性の活躍が日本経済活性化の決め手になるとして、注目を集めるようになっています。人口減少社会のなかでは、少しでも労働市場に出て活躍する人を増やさなければいけません。日本においてその潜在的なポテンシャルが大きいのは女性だからです。

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女性役員比率の国際比較

国際比較をすると日本では働いている高齢者が多い一方、女性は子育て世代の30代で労働力率が低くなる問題などがあり、それをなんとかしようとの議論が行われています。さらに管理職や役員への女性登用を進めなければいけないとの声が高まり、安倍政権が策定した成長戦略でも女性管理職・役員への登用拡大に向けた働きかけなどが明記されました。

安倍政権はこの問題に一生懸命取り組んでいると思います。ただ、経済政策を考えるとき、現在のようにみんなが疑いもなく同じ方向へ進んでいるときは、少し注意する必要があるのも確かです。

政府は「社会のあらゆる分野において2020年までに指導的地位に女性が占める割合が30%になるよう期待する」との目標を掲げたほか、安倍首相は上場企業に女性役員を少なくとも1人置くべきだと主張しました。

こうした主張の根拠には「女性役員の多い企業はパフォーマンスがよい」という複数の研究結果が置かれています。しかし、それらの研究の因果関係がよくわからないという問題点があることは、あまり指摘されていません。つまり、パフォーマンスがよいから女性役員比率を高める余裕があるのかもしれないし、女性の役員の多さ以外の要因がパフォーマンスと女性役員の多さに影響を与えているのかもしれない、というわけです。

これは経済学で内生性といわれる、分析を行う際の厄介な問題です。ところが現在の議論はそうした問題点を考慮せず、数値目標だけが先行している感があります。

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