「ほどほど感」が蔓延する職場

ある大手企業の中間管理職層を対象にした次世代幹部育成研修をお手伝いしている。経営者の目線に立ち、未来を見据えて経営課題を抽出・検討し、経営陣に提言するというものだ。

いくつかのチームに分かれて検討しているが、その中のひとつのチームは「社内に蔓延している“ほどほど感”をいかに払拭するか」をテーマとして取り上げた。「ほどほど感」とはけっして手を抜いているわけではないが、かといって100%、120%の力を発揮しているかというと、そこまで発奮しているわけではない状態を指している。

この会社の社員は総じてとても真面目で、優秀だ。潜在能力はとても高い。しかし、その秘めた力を思う存分発揮しているかというと、多くの社員はそうなっていない。もっとやれるのに、ほどほど、そこそこで満足してしまっている社員が多いというのがこのチームの見立てであり、危機感だ。

「ほどほど感」が蔓延する理由はけっして単純ではない。会社の業績、責任権限も含めた仕事の与え方、成果に対する評価の仕組み、さらには長年の歴史の中で形成されてきた風土などいろいろな要素が影響を与えている。

解決策は容易ではないが、「この“ほどほど感”をなんとかしなければ、会社の未来はない」というチームの問題認識はとても健全だ。70%の力しか発揮しなければ、70%以下の結果しかついてこないのは当然だ。

もっともっと上を目指せる力はあるのに、70%程度のほどほど、そこそこが常態化し、いつの間にかみんなで「ゆでガエル」状態に陥ってしまう。一流の会社と並の会社の境界線は、この「ほどほど感」を払拭できるかどうかにかかっているといっても過言ではない。