10月、ヤフーが電子商取引(EC)サイトの出店料と売上手数料の無料化を発表。直後、ヤフーおよび競合である楽天の株価は大きく下落した。今後、日本のECはどう変わるのか。

まず述べておきたいのが、ヤフーと楽天のどちらが勝者となるかを議論してもあまり意味がないということだ。結論から言えば、どちらも成長し、共存できると考えられる。その背景には両社のビジネスモデルの違いがある。

楽天の強みは徹底的な「店舗ファースト」にある。店舗の売り上げを最大化し、成果を分け合うのが同社のモデルであり、店舗からの月額利用料と売上額に応じたシステム利用料が収益の大きな部分を占める。ECに参入する店舗にとって大切なのは、売り上げの拡大である。楽天は専任のECコンサルタント部隊を数多く抱え、店舗の売り上げ拡大を支える仕組みを整備してきた。こうしたニーズは今後もなくならないだろう。すでに三木谷浩史社長はヤフーに追随しない姿勢を明らかにしており、株価も持ち直しつつある。

一方、ヤフーの狙いは消費者が集まる売り場をつくり、広告収入等を稼ぐことにある。無料化で出店者や品数が増えれば、必然的に価格などの競争が起きる。売り場が魅力的に育てば流通額が伸びる。同社は無料化発表後の2週間で約5万5000件の申し込みがあったと明かしているが、ビジネスモデルが軌道に乗るまでには相応の時間を要するだろう。株価下落の背景には、短期的な成長を懸念する市場の声がある。

UBSでは、ヤフーについても中長期的には大きな成長が見込めると考える。実は出店料無料を掲げるECサービスはヤフーが初めてではない。

「BASE」「STORES.jp」のほか、今後も新規参入があると予想するが、ヤフーは既存ユーザーの基盤や財務基盤などで優位性を発揮できるだろう。

ヤフーが目指すのはECモールそのものではなく、各種ECモールや売り場を横断的に検索できるプロダクトサーチに近い。その意味では、売り手寄りの楽天より、消費者寄りの価格.comやGoogleショッピングがライバルとなるかもしれない。2つのビジネスモデルは異なるが、それぞれに価値をつくりだせるはず。日本のEC市場の成長は中長期的には加速するだろう。