東京オリンピック開催決定を追い風に、不動産市況が上昇基調にある。日本における2013年上半期の不動産売買額はすでに12年通年を超え、直近のピークである07年上半期を上回った。不動産売買の約70%を占めるのが不動産投資信託(REIT)だ。

REITとは、投資家から募った資金をオフィスビルやマンションなどに投資し、賃料収入などによる運用益を分配する金融商品。五輪開催が決定した9月の1カ月間、東証株価指数(TOPIX)が約7%上昇したのに対し、東証REIT指数の上昇幅は約16%に達した。

上昇は一過性のものなのか、今後も続くのか。五輪開催決定が短期的にプラスの影響を与えていることに疑いはないが、仮に五輪開催が決定しなくとも、景気の波に乗って上昇基調は続いていたと考えられる。

REITは扱う物件によってオフィス系、物流系、住宅系などに分けられる。このうち、景気との連動性が最も高いのがオフィス系である。三鬼商事によると、12年6月の9.43%をピークに、オフィス空室率はほぼ一本調子で下落。当社では13年末に7.7%、14年末には6.9%まで改善し、少なくとも16年半ばまで減少が続くと予想する。こうした傾向を背景に、オフィス系REITは中期的に上昇すると考えられる。

なかでも上昇期待が高いのは、日本最大のオフィス系REITである日本ビルファンドだ。三井不動産がサポートする同ファンドは、好立地にハイクラスの大型ビルを有し、賃料の上昇余地が相対的に高い。また、森ビルグループの森ヒルズリートも注目されよう。六本木ヒルズを中心にSクラス物件を多数抱えているのが大きな強みだ。

物流系REITにも上昇余地があるだろう。ネット通販の拡大によって、倉庫などの物流施設の需要が増えることが予想される。三井物産がスポンサーの日本ロジスティクスファンドは、首都圏沿岸部を中心に良質な物件を保有しており、持続的な成長が見込めよう。

一方、住宅系REITの上昇は期待しにくい。住宅系REITのビジネスモデルは賃貸マンションを保有し、賃料を稼ぐこと。だが、賃料は不動産価格に比べて景気との連動性が低く、上昇が期待できない。安定的に推移するものの、投資の妙味は少ないだろう。

(成=プレジデント編集部)
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