この点を踏まえて見事に第2の人生を築き上げた人が浜潤一氏である。個人客にファッションアドバイスをするパーソナルスタイリストで、アパレル会社「ドゥクラッセ」の専属スタイリストを務めている。意外にも、前職は70回以上も表彰を受けた警視庁の敏腕刑事だった。

「退職した先輩が輝いていなかった」というのが、浜氏が51歳で刑事を辞めた理由。退職後、靴の修理やそば打ちに挑戦した。しかし、一生の仕事とは思えず悩んでいたとき、たまたま開いた本のなかの「朝まで話していても飽きない話題は何か」との問いに目を奪われた。思えば幼い頃から洋服が大好きで、友達と会うとファッションの話ばかり。「ファッションしかない!」と考えた浜氏は、インターネットで見つけたパーソナルスタイリスト養成学校に入学。優秀な成績でパーソナルスタイリストとしての認定を受け、いまの世界へ飛び込んだ。いまや年収は刑事時代の2.5倍。仕事や私用で年に7回は海外に行く。自分のアドバイスで変身したことを喜ぶ顧客の姿を見たときに最大の幸せを感じる浜氏は、「キャリアの棚卸しというが、私の場合、そこから出てきたものは自分の子どもの頃からの夢だったのかも」と話す。

浜氏と同じように、新たな挑戦に臨もうと勉強を始める中高年の人たちも多い。通信教育の大手ユーキャンのカスタマーマーケティング部の加藤肇部長は、「中高年の男性の1番人気はマンション管理士ですね。意外なところでは調理師。お金に余裕があって『いずれは店を持ちたい』と考える中高年層に人気があります」という。女性の中高年層に支持されているのは、ケアプランの作成やサービスの調整を行うケアマネージャーや介護福祉士などだ。

「大胆なキャリアチェンジである程度の収入を確保したいのならやはり介護関係。男性でも介護の現場で力仕事や夜勤のできる人は重宝され、介護施設の車の運転手といった仕事もあります」と、いぬかい氏も話す。また、行政や自治体主導の資格制度に目を向けるのも1案という。環境省の環境カウンセラーや、東京都稲城市など複数の自治体が採用している介護支援ボランティアがある。

「資格も発想次第で役に立てる方法はいくつもあります」と、いぬかい氏は指摘。取った資格を使って生きがいの感じられる副業につなげられるかどうかも、結局は自分次第なのだ。