引退した自民党の古賀誠元幹事長を支持する議員グループの間で、スティーブン・スピルバーグ監督の映画『リンカーン』が、遅ればせながら密かなブームになっている。『リンカーン』は今年4月に公開され、9月中旬にDVD化。安倍晋三首相も5月11日に映画館で観賞。

「指導者は常に難しい判断を迫られる」と記者団に感想を述べた。

古賀派関係者によると、8月5日、古賀氏に近い議員たちは永田町の国会議員会館で『リンカーン』の上映会を開いたという。古賀派関係者が説明する。

「上映会は古賀氏の勧めで開かれた。古賀氏は昨年11月に議員引退を表明し、古賀派を岸田文雄外相に譲ったが引退後も岸田派の総会に出席して発言している。よく話題にするのが『リンカーン』。岸田派以外の議員にも“『リンカーン』はいいよ。ぜひ見て”と熱心に勧めている」

映画は、奴隷制廃止をめぐる米議会の対立に焦点を当て、奴隷制廃止に反対する議員たちをリンカーンが個別に、粘り強く説得していく様子を克明に描いている。古賀氏の狙いを関係者はこう話す。

「奴隷制廃止には議会の3分の2の賛成が必要。リンカーンは反対派議員を個別に回り説得したのです。一方、改憲論者の安倍氏は、憲法改正発議の条件を国会議員の3分の2以上から過半数への緩和を目指している。“あのリンカーンですら3分の2を守ったのだから、日本も3分の2を変えるべきではない”というのが護憲派の古賀氏の持論です」

古賀氏は、政敵の日本共産党の機関紙のインタビューを受けて、改憲反対を表明。大きな話題になった。

古賀氏らの動きに呼応するように、首相の盟友の麻生太郎財務相も7月29日、国家基本問題研究所(櫻井よし子理事長)のセミナーで「自分は左翼だ」「憲法改正論議を狂騒、熱狂の中で決めてほしくない」と改正論議にブレーキをかけた。

ちなみに麻生発言について、朝日新聞は、ナチスがワイマール憲法を破壊した手法に学ぶべきだ、という趣旨として報道。政治問題化しているが、現場にいた櫻井氏は産経新聞に“ワイマール体制崩壊の失敗から学べという正反対の趣旨にしか聞こえなかった”などと書いている。

党内外の改憲反対を受け、首相も「改憲は簡単には進まない」と再確認。改憲が必要ない「集団的自衛権の政府見解の見直し」を先行させる方針だ。