【田原】そんな夢のような豆が実際にあるのですか。

【出雲】農学部に入ってまわりに尋ねてみましたが、「そんな食べ物があるわけないだろう」といわれました。でも、サークルの後輩であり、一緒に会社をつくった仲間でもある鈴木(健吾)に、「ミドリムシなら動物と植物の両方の栄養素を持ってますよ」と教えてもらって、ミドリムシこそ仙豆だと。

【田原】それがミドリムシとの出合いですね。仙豆になるものが見つかったのなら、食用化もすぐですか。

【出雲】いえ、ミドリムシは屋外で大量培養することが難しいのです。ミドリムシは栄養満点なので、培養中にほかの雑菌がやってきてミドリムシを食べてしまいます。それを防ぐために半導体工場のようなクリーンルームで培養しますが、そのような環境をつくるのにはお金がかかり、しかも月にスプーン1杯程度しか培養できない。日本でも多くの先生が研究してきましたが、すべて頓挫していました。アメリカとイスラエルなど、ミドリムシを研究しているほかの国でも状況は同じでした。

【田原】世界中で培養計画が失敗してるのに、出雲さんはどうしてやろうとしたのですか。

【出雲】ミドリムシのことを知ったばかりで「これこそ仙豆だ」と喜んでいたところだったので、頓挫したと聞いてもやめようとは考えませんでした。