目を離してみれば、最悪のできごとにも無数の側面があり、さまざまな角度から捉えることができるとわかります。どこから見ても悪い状況というものは、めったにあるものではありません。

(Getty Images=写真)

それでも、苦しみに正面から立ち向かう勇気が持てそうもないときには、次のことを思い起こしてください。私たちが経験するものごとで、永遠に続くものはまずありません。すべてのことは、変化し朽ちていく運命にあるのだと。どんな悲しみや苦しみも、例外ではないのです。

そして、これだけは言えます。苦しみを経験することで、他の人もみんな苦しみに耐えているのだと思いを馳せられるのであれば、苦しみは私たちに思いやりを起こさせ、他人を傷つけまいとする強力な動機になるということです。

さらに、苦しみによって感情移入の能力が呼び起こされ、他人との一体感を持てるようになったとしたら、その苦しみは思いやりや愛の基盤となったとさえ言えるのです。

東日本大震災、それに続く福島第一原発の事故は、まさに未曾有の危機を引き起こしました。これに対処しなければならない日本のさまざまな段階でのリーダーたちが、自信を失っているのではないか、という話を耳にします。

本当でしょうか。だとすれば、政治、経済、社会のリーダーの方々は、もう少し広い目で問題を見る必要があります。

あなたがたの小さな島だけを見ていれば、経済が不況に陥っていたうえに、自然災害が重なり、さらに原子力災害まで起こってしまった。それまでプライドを持って世界に誇っていた日本の原子力産業、それ自体が問題の根源になってしまったのだから、どうしていいのかわからなくなった。