雇均法が整備された第1フェーズ、育休や時短制度など女性に優しい環境が整えられた第2フェーズ。そして、男女双方の働き方改革である第3フェーズへと時代は動き始めているのです。
グローバル進出とともに猛スピードで改革に取り組む!
「カップヌードル」や「チキンラーメン」をはじめ、即席麺やチルド食品、冷凍食品、菓子、シリアル食品、乳製品、清涼飲料などの製造および販売を行う。1948年創業。本社は、東京(新宿区)と大阪(淀川区)。
従業員数:2002人、うち女性377人(2015年12月時点)
「女性活躍推進法は私たちにとっては追い風。一つの目標に向かい社員のモチベーションも高まるし、社内外に日清食品グループの取り組みを発信できる」。上村成彦執行役員(グループ人事責任者)は手放しで女活法の施行を歓迎する。
日清食品グループは事業のグローバル化に呼応して2011年頃からダイバーシティ活動に取り組んできた。15年5月には部門横断型の全社的な「ダイバーシティ委員会」を発足し、本格的なスタートを切った。
委員長のズナイデン房子氏(取締役)は「グローバル化など外的環境変化に対応するには異なる意見を取り込む多様性に富んだ企業体質を目指していくべきであり、その第1段階がジェンダーダイバーシティです。即席麺の購買層の半分は女性。女性の視点からビジネスイノベーションを生み出すには女性のキャリアを育成し、活躍してもらうことが重要」と、その目的を語る。
メンバーは前述の2人のほかに研究部門など6部署の独身者や子育て中の女性を含む、一般社員から男性管理職まで“多様な”約15人。
先陣企業の失敗や成功を学びのタネに、倍速で進む
スタート当初、全従業員に女性活躍に関するアンケート調査を実施。その結果を分析し、取り組むべき施策を検討。最終的に約20のプロジェクトを設置した。メンバーがそれぞれのプロジェクトを担当し、月1、2回開催される委員会に進捗状況を報告。皆で議論しながら進めているが、そのスピードが速い。
「他の企業が5~6年かけて進めている施策を1年でやりましょうと委員会を設けました。プロジェクトはほとんど1人か2人。掛け持ちで担当していますが、すごいスピードで実行へと進んでいます」(上村執行役員)
プロジェクトから提案し、経営会議で承認された案件は人事部で制度化されていく。2016年から実施された制度もめじろ押しだ。
委員会発足からわずかの期間に制度化が可能な理由として上村執行役員は「先人の知恵を学んでいます。先行して制度を実施している企業に話を聞きに行き、その失敗や効果も含めて参考につくっているので、スピードも速まるという後発ならではのメリットがあります」と強調する。もちろんそれだけではない。同社の安藤宏基CEOの強いコミットメントが働いている。
「委員会の提案に賛同し、今年の年頭の挨拶でもCEOはダイバーシティを推進していくことを呼びかけています。今年はダイバーシティ元年と位置づけるなどトップ主導で進んでいることが大きい」(ズナイデン委員長)
委員会は、女性社員の思いをインタビューした4分間の動画を作成し、経営陣にプレゼン。ダイバーシティ推進のロゴやポスター作成など全社的な浸透も同時に行っている。
この取り組みと並行して女性リーダーの育成もさらに強化する。同社の女性社員比率は18.8%、そのうち女性総合職は33.7%(127人)。現在、女性管理職比率は約3.3%であるが、25年度までに15%達成を目標に置く。
女性管理職を増やしていくための施策として、今年から企業内大学で「女性リーダー育成研修」をスタートする。
「どういうスキルやコンピテンシー(能力)を伸ばしていけば、日清食品の管理職としてグローバルに戦っていくことができるのか。個人ごとに今の状態とあるべき姿のギャップを埋めるための育成プランを作り込んでいくことにしています」(ズナイデン委員長)
その準備段階として委員長自ら女性管理職候補約40人と面接したが、予想に反して意欲的な人が多かったと驚く。
「上昇志向が強く、将来、就きたいポジションや、やりたいことのイメージをしっかり持った意欲の高い人が多かった。しかも才能ある人が多く、しっかりと育成していけば優秀な管理職になるに違いないと確信しました」
当初の研修生は10人強を想定。育成後の管理職昇進試験の合格を目指す。管理職試験は、過去の人事評価と上司の推薦を要件に筆記試験を実施。2次の面接を経て、3次の社長面接で合否が決まるという難関だ。実際に7回目で合格した社員もいるくらいだ。
女性活躍推進法の取り組みにも意欲的な同社。上村執行役員は「行動計画は、私たちの施策とぴったりマッチしています。女性採用比率30%以上という目標や女性管理職比率の目標を併せて設定していく予定」と意欲を燃やす。
私たちが取り組んでます
部署を横断した精鋭たちが集結!
2015年5月に発足。人事部に加え、マーケティング部など様々な部署や役職、立場の人が参加する、会社を横断した委員会。一人ひとりがプロジェクトの責任者となり、新しく出てくる20以上のプロジェクトを同時進行させて精力的に取り組んでいる。
▼こんな取り組みをしています!
・早期復帰支援制度
・在宅勤務制度
・非常時保育料補助制度
・女性リーダー育成プロジェクト
・カムバック制度
・シスター制度 など
時短や在宅勤務など状況に合わせて柔軟に働きたい人へのサポートだけでなく、早く復帰したくても保育園が見つからない人へはシッター代補助なども準備する。