「すべての加熱式を、過去に変える。」との挑戦的なフレーズとともに、日本たばこ産業(JT)の新たな加熱式たばこ用デバイス「Ploom AURA」が市場に投入された。喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある商品「Reduced-Risk Products(RRP)」カテゴリへの関心が世界的に高まる中、新デバイスの推進力を得て、JTはどんな成長、進化を実現しようとしているのか。キーパーソンたちの言葉から、目指す姿が浮かび上がった。

グローバルで一貫した成長が見込まれる加熱式たばこ市場

5月に開かれた「JTグループRRP事業戦略・新商品発表会」では、筒井岳彦氏(JTインターナショナル RRP エグゼクティブ・バイス・プレジデント)、ナターシャ・ミロセビッチ氏(JTインターナショナル マーケティング&セールス シニア・バイス・プレジデント)、山口顕氏(日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 RRP商品企画統括部長)が登壇し、RRP戦略、新商品の開発背景、新ブランドの紹介、そして日本市場で描くPloomの成長などが語られた。

JTグループRRP事業戦略・新商品発表会の会場
JTグループRRP事業戦略・新商品発表会の会場

「加熱式たばこを含むRRPカテゴリは、世界のたばこ市場の構造を再編しつつあります」

筒井氏は、大きな変化のさなかにあることを改めて強調した。

「喫煙環境や健康意識の変化、そして絶え間ないイノベーションによる商品の進化を背景に、紙巻たばこに代わる選択肢への関心は、ますます高まっています。今後10年を見据えても、全てのたばこ事業セグメントの中で加熱式たばこは最も力強く、かつ一貫した成長を期待できる市場です」

筒井岳彦氏
筒井岳彦氏
JTインターナショナル RRP エグゼクティブ・バイス・プレジデント

JTの見立てでは、世界の加熱式たばこ市場は年平均で3%の成長率を維持し、2035年には、たばこ市場全体の22%のシェアに達するという。もちろん、加熱式たばこブランドを展開する各社にとっても好機であり、競争がますます激しくなるのは明白だ。競争に勝ち抜くために必要なポイントとして筒井氏が挙げたのは、次の通りだ。

「こうした中でPloomが成功を収めるためには、経営資源の集中、スピード、そして差別化が重要であると考えています」

最重要セグメント「HTS」へ優先的に事業資源を投資

RRPにおいて、JTが最重要セグメントと位置付けるのが「Heated Tobacco Sticks(HTS:加熱式たばこスティック)」である。筒井氏は言う。

「HTSは、たばこ事業全体においても成長戦略の中心です。優先的に事業資源を投資し、紙巻きたばこに次ぐ第2の成長エンジンとして確立すべく、製品開発、ブランド強化、市場拡大に注力しています。独自の体験やスタイルを提供するPloomブランドがそれをけん引すると同時に、その他のRRPセグメントが、将来の成長につながる可能性を見極めるための探索的な役割を担います」

2025年から27年の3年間で約6500億円の投資を計画し、28年RRP中期展望(グローバルベース)として「HTSセグメント内シェアで10%台半ば」と「RRPビジネスの黒字化」を掲げる。

「23年からグローバル展開が加速したPloomは、3年足らずで26市場に拡大するなど、世界各地で存在感を高めています。HTSセグメント内のシェアは8.2%(25年2月時点)で、およそ2年の間に3.6%もの成長を遂げました。中期展望で掲げた目標の達成へ、視界は良好です」

ナターシャ・ミロセビッチ氏
ナターシャ・ミロセビッチ氏
JTインターナショナル マーケティング&セールス シニア・バイス・プレジデント
「Ploomがグローバル・パワー・ブランドとしてさらに飛躍する準備が整った」と語るナターシャ・ミロセビッチ氏。

ライバルを追い抜き、一気に突き放す

これまでにないほどの「攻め」の姿勢をJTが打ち出している裏側には、競合他社に後れを取り、先行を許してしまったという苦い経験がある。登壇後、単独インタビューに応じてくれた山口顕氏も思いを吐露する。

「国内のHTS市場で、当社は3位に甘んじています。1位のシェアとはいまだ大きな開きがあり、このような状況にあることが本当に悔しいのです。だからこそ、なんとか早い段階でこの差を縮めたいと考え、試行錯誤を重ねてきました」

山口顕氏
山口顕氏
日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 RRP商品企画統括部長

19年のPloomブランドのHTSカテゴリ誕生以降、継続的なデバイスのイノベーションによってユーザーのニーズに応え、支持層を広げてきた。特にPloom X(21年)が契機となって、国内HTSセグメントでのシェアは4%程度から12.7%へ上昇(25年第1四半期時点)するなど、目覚ましい追い上げを見せている。そうして今、「2位の背中に手が届くところまできている」と手応えを口にする山口氏の目には、さらに遠く先の風景が映る。

「追い付くだけでなく、追い抜いて一気に突き放すつもりです。26年には、Ploomが国内HTS市場のナンバー2としてのポジションを確固たるものにします」

自身の立ち位置を「挑戦者」と表現する山口氏。

「JTに対して、保守的な企業という印象をお持ちの方も少なくないでしょう。しかし、私が当部門のメンバーに言い続けてきたのは、われわれは追いかける立場であること、だから新しい挑戦を恐れてはいけないということです。常に積極的な提案、前向きな意見が出てくる、組織にそんなマインドセットが根付いたことが、近年のPloomの躍進を後押ししていると確信しています。今後も愚直に、丁寧に、多様なコミュニケーションを通じて、お客さま一人一人にブランドの魅力をお伝えしていきたいと思っています」

※第2四半期(QTD)の国内HTSセグメント内シェアは13.6%