BAT 最高経営責任者
1992年、ブラジルのBATグループに入社。財務部門でさまざまな職務を担当後、ベネズエラ、コロンビア、東欧で要職を歴任。2014年からBAT本社の経営委員会メンバーに就任、グループのトランスフォーメーション・ディレクターや最高財務責任者を経て、23年より現職。
世界的にも競争が激しいとされる日本の加熱式たばこ市場。たばこの害を減らす「たばこハームリダクション」の考え方に基づき、スモークレスな世界を築くことで「A Better Tomorrow™(より良い明日)」の創造を目指すBATが、その実現をよりたぐり寄せるための次の一手を打ち出した。6月に開かれた「BATジャパン戦略説明会」において、BATジャパン社長のエマ・ディーン氏が「エキサイティングなイノベーション」と表現した新たな加熱式デバイス「glo™ Hilo」の投入だ。
glo™の世界デビューは2016年、「誕生の地」として選ばれたのは仙台だった。再びこの地から新デバイスの展開、そして次の変革への一歩を踏み出したという事実は、BATがいかに日本のマーケットを重要視しているのかを示している。BAT 最高経営責任者を務めるタデウ・マロッコ氏は、改めて、BATが揺るぎない目標を掲げていることを強調した。
「われわれは“スモークレスな世界を築く”というビジョンの下、パーパスとして“A Better Tomorrow™(より良い明日)”の創造を掲げています。これは具体的に申し上げると、燃焼式たばこを使用している方々に、加熱式たばこをはじめとするリスク低減の可能性を秘めた代替製品へ完全にスイッチすることを促すことです。刷新された新たな戦略を羅針盤として、ダイナミックなビジネス、質の高い成長、持続可能な未来を成し遂げ、スモークレスな世界を構築したいと考えています」
プレミアムセグメントに参入する準備は整った
マロッコ氏は「そんな未来が到来することを確信している」と自信をのぞかせ、その理由を述べた。
「世界のニコチン業界は急速な変革が進んでいます。加熱式たばこを含む新カテゴリーの成人消費者数は、18年を基点とすると2倍超に増加しました。しかし、これはあくまでも変革の始まりに過ぎません。世界にはおよそ10億人超の紙巻たばこの喫煙者が存在しているとされ、この方々が引き続きニコチンの摂取を希望する場合に新カテゴリーへの切り替えが進むと、公衆衛生上の大きな可能性が広がると考えられるからです。ここ日本においても、加熱式たばこが市場に登場して以降の10年間、紙巻たばこの販売数量は減少し続けています。近い将来にシェアは逆転し、加熱式たばこがけん引することになるでしょう。BATは35年までにスモークレス製品によるグローバルでの売上高の割合を50%に引き上げることを目指していますが、BATジャパンにおいてはすでに日本で50%超を達成していることからも、今、加熱式たばこが中心市場へと向かう極めて重要な転換期を迎えていることが分かります」
加熱式たばこは、スモークレス製品の収益において最大カテゴリーであり、日本はその中心を担っている。新カテゴリーへの切り替えが加速していくことが予測される中で、BATがプレゼンスを高めるためにフォーカスしているのは、「絶え間ないイノベーションだ」とマロッコ氏。
「スモークレス製品のイノベーション創出に対して、年間3億ポンドの投資を実施しています。世界に3拠点のイノベーションセンター、50社を超える戦略的開発パートナー、二つの先行製造拠点、加えてスタートアップや大学といったさまざまなオープンイノベーションパートナーを持ち、これらをイノベーション・エコシステムとして整備・進化させることによって、他社とは一線を画する科学的なアプローチに基づく独自の製品開発力を確立しています。こうして10年近く前に始まったglo™ブランドの挑戦はアップグレードを重ね、先進的なデバイスglo™ Hiloの誕生によって、さらなる成長領域として期待されるプレミアムセグメントへの参入準備が整いました」
ニーズに応え続けるために消費者の声を反映させていく
9月からglo™ Hiloの全国販売が開始、さらにもう一つの新デバイスであるglo™ Hilo Plusもラインアップに加わり、強力な製品ポートフォリオが構成されることになる。マロッコ氏は言う。
「glo™ Hiloはmygloアプリと連動したブランド初のコネクテッドデバイスである点など、これまでになく洗練され、革新的なプロダクトであると自負しています。皆さまにとって初めて触れるイノベーションでありながら、かつBATに期待されていることにしっかりとお応えできる、魅力的な製品であると思っています。とはいえ、繰り返しになりますが、これもまた単なる一つのスタート地点なのです。大事なのは本質的なニーズに応え進化し続けていくことですから、これからも消費者の皆さまとの対話を重視し、声を反映させることによって、より良いエクスペリエンスをお届けしていきたいと思っています」