東大などがハーバード大の学生受け入れを発表

――万が一、ハーバード大学で学べない留学生が出る事態になった場合、留学生が東京大学に編入してくる可能性はあるのでしょうか。

【佐藤】現地の日本人留学生たちに聞いてみましたが、仮に学生ビザが差し止められても、「他の大学に転出する」という人は極めて少なく、「休学」を検討している人が多かったです。その理由は、「すでにここには多くの友人がいて、ハーバード大学のコミュニティから離れたくないから」だそうです。

万が一、アメリカの大学で学べない状況になっても、留学生が大学ランキングでハーバード大学より下のランクの大学に転出する可能性は極めて低いと思います。あるとすれば、単位を認定する交換留学のような形ではないでしょうか。

というのも、中国でも韓国でもインドでも卒業した大学のブランド力は、就職に直接、関わってくるからです。世界の一流企業や組織に就職する上でハーバード大卒のブランド力は絶大ですから、他の大学に転出する人は極めて少ないと思います。

【図表】世界大学ランキング トップ30
出所=『プレジデントFamily2025春号
THE世界大学ランキング2025年版では、教育(学習環境)、研究環境、研究の質、国際性・国際的展望、産業の5つの領域における18の指標により各大学が評価されている。

――今後、トランプ大統領vs.ハーバード大学の対立は収まるところに収まり、関税問題ほど、大きな影響を日本にもたらさないと思いますか。

【佐藤】6月18日、米国務省は新しい指針に基づき学生ビザの申請のための面接予約を近く再開すると発表しました。これから留学する日本人学生も8~9月の入学までにビザを取得できる可能性が高いのではないでしょうか。つまり短期的には日本への影響は最小限で済んだといえそうです。

佐藤智恵『なぜハーバードは虎屋に学ぶのか』(中公新書ラクレ)
佐藤智恵『なぜハーバードは虎屋に学ぶのか』(中公新書ラクレ)

一方で、長期的には日本経済に少なからず影響をもたらすと思います。私自身、コロンビア大学経営大学院の入学面接官をつとめていますが、トランプ政権の方針で、今後、アメリカの大学における留学生の数が全体的に減ってしまわないか、アメリカ留学に挑戦する日本人学生がさらに減ってしまわないか、懸念しています。現在、ハーバード大学・大学院で学んでいる日本人学生数は110人。中国人学生数は1282人、韓国人学生数は252人ですから、近隣国にくらべても圧倒的に少ないのがわかります(出所:HARVARD International Office)。

ただでさえ、日本人留学生は少ないのに、こういう騒動があると、「学生ビザが取得できないのでは」「日本人は不利なのでは」と心配して、アメリカへの留学をとりやめる人が出てくるのではないかと。とするならば、日本にとっては大きなマイナスとなります。歴史的に見ても、日本の政治、経済の中枢において、変革リーダーとして活躍してきたのは留学経験者だからです。

ハーバード大学の教員にインタビューをすると「日本からの留学生がもっと増えてほしい」といった声を必ず聞きます。日本政府も日本企業もアメリカの大学に挑戦する学生のサポート体制をより強化し、より多くの日本の若者が留学に挑戦することを願っています。