「AI新時代」を見据えたトータルソリューションを提供
――はじめに、創業からの歩みについて聞かせてください。
代表取締役社長 CEO
【李】当社では、2005年の創業以来、米スーパーマイクロ社の正規一次代理店として、サーバーネットワーク、ストレージなどの導入相談から納品後の保守まで、一気通貫したサービスを提供してきました。21年にはAI事業部を新設し、22年に自社開発のAIサービス「CAT.AI(キャット エーアイ)」を提供開始。昨年までは「インフラ事業部」と「AI事業部」という2つの事業部に分かれていたのですが、お客さまに最適なAIソリューションを提供するため、今年から「AIプラットフォーム事業本部」として統合しました。
インフラからプラットフォーム基盤、アプリケーション、サービス、ユーザーインターフェイスまで一貫したAI環境の導入を支援するトータルソリューションサービスを、全社を挙げて推進していきます。
――20周年を機に、新たに「Visionary AI Orchestrator」というスローガンを掲げられています。
【李】これからは、ユーザーからのリクエストに対して、専門性を持つ複数のAIが協同して仕事をする時代になっていきます。そうした中で私たちは、最適なAI環境の導入を支援する指揮者のような存在でありたい。そんな思いを込めてOrchestratorとしました。Visionaryは、「10年先の働き方と顧客体験を見据えてAIサービスを創造する」という私たちの姿勢を表しています。

――IT環境全体をトータルにサポートできることには、どんなメリットがあるのでしょうか?
取締役副社長 COO
【松浦】例えば、「データがクラウド上にあるのは、セキュリティ面で心配だ」という相談があったとします。一般的なAIサービスは、クラウドで提供するノウハウしか持ち合わせていないケースがほとんどです。
その点、当社なら、クラウド環境だけでなく、自社内にサーバーやネットワーク機器を設置して運用・管理するオンプレミス環境も提供することが可能で、しかもハードからインフラまでをトータルで構築することができます。このように、「お客さまに多様な選択肢を提供できる」という意味でも、今回の事業統合は大きなメリットがあると思います。
【澁谷】現在、AIのサービス提供はソフトウェアサービスが先行している印象がありますが、今後、ユーザーの習慣や好み、業務内容を学習し、自律的に行動する「自分専用のAIエージェント」が一般的になってくると、より高い機密性が求められます。そのため、クラウドではなくオンプレミス環境のニーズが高まるでしょう。その際、当社ならお客様の細かなニーズに沿った提案を行うことができる。当社の優位性は、そこにあると考えています。
【松浦】AIは、例えば「1足す1は?」というような質問に対しても、膨大な電力とコンピュータリソースを使って、ようやく「2」と答えを出します。本来、このような単純な質問なら電卓で計算すれば、消費電力はほとんどゼロですよね。しかし、インフラ担当者はインフラのこと、アプリ担当者はアプリのことしか考えないことが多いため、導入に際してこうした課題が問題になることはほとんどありません。
その点、私たちには両方の知見とノウハウがありますから、トータルの消費電力はどれくらいか? 構築コストはどれくらいかかるか? どんなレベルのハードウェアが必要か? などを総合的に判断したうえでAIサービスを構築していくことができます。回答プロセスにしても、リソース効率を考慮したうえで、単純なロジックで返すこともできるし、生成AIを使った柔軟な回答を返すこともできる。この組み合わせこそが当社の強みなのです。
【澁谷】私は、ITやAIは、あくまで「手段」であって、大切なのはCX(顧客体験)だと考えています。ユーザーの多くは、裏側でどんなプロセスを踏んでいるのかは気にしていません。「どう見えるか」「どう答えるか」「どう聞こえるか」ということがサービスのクオリティであり、サービスに対する評価につながるのです。だから私たちは、導入を検討される顧客に対して、「この商品を導入することで、御社のユーザーにこんな体験を提供できますよ」と訴求しています。
AIは「ともに未来を創造するパートナー」
――7月に新たにリリースされる「CAT.AI マルチAIエージェント」の特徴を教えてください。
取締役 CPO
【澁谷】今回リリースする「CAT.AI マルチAIエージェント」は、業務用途に応じて、専門性を持つ複数のAIエージェントが情報収集・判断・応答などの機能を分担して行う点が特徴です。ユーザーからのリクエストに対して、指令役となるリードエージェントが各専門エージェントの動作を制御・連携させてタスクを並行処理することができます。
従来のシングルエージェントでは対応が難しい複雑な業務にも柔軟に対応できるようになるため、問い合わせ業務における回答幅の拡大をはじめ、AIによる自動化システム運用の簡素化、業務効率化をもたらし、スムーズで分かりやすい顧客体験を提供することができます。
――今後、ビジネスパーソンは、どのようにAIと付き合っていけば良いのでしょうか?
【李】「AIと共存共栄していく」という姿勢が大切だと思います。私たちが創業以来掲げているコンセプトは、「人に代わるAIではなく、コミュニケーションを豊かにし、人と共存するAIサービス」です。AIの進化で、まるで人と話しているような自然なコミュニケーションを実現できれば、パターン化された定型作業はAIに任せ、人間にしかできない創造的な仕事に集中できます。
また、省力化によって生まれた時間を、もっと自分や家族のために使うこともできるでしょう。私たちのサービスを通じて、みなさんが思い描く「こうなってほしい」という未来を実現していきたいと思っています。