映画館にベビーカーが大集結
東京大学からテレ東に入社し、2児の母でもある飯田さんの“野望”は他にもある。そのターゲットはまだ子育てを経験していない20代~30代の若い世代だ。
「20代、30代の独身世代が、いざ結婚して子育てをしようとするとき、子供を持つことをポジティブに考えてくれたらうれしい」
その一環として取り組んだのが、番組の映画化だ。2023年5月に公開された『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』は、初日から満席になり、都内のある映画館内はおびただしい数のベビーカーが所狭しと並んだ。予想観客動員数は「よくても10万人」だったが、最終的には累計20万人を突破し、予想外の大ヒットに。
「一般的に、映画館デビューするのは、早くても3歳か4歳頃。ママたちも出産後は映画館から遠のいてしまいます。つまり、映画館は公的施設でありながら、赤ちゃんの来場が想定されていない。それなのに、映画館にベビーカーが何十台も並んだんです。私が見てもあの光景は壮観でした」
何も知らないで映画館に来た若い人は、「今日何かあったの?」と目を丸くした。
「その反応こそ、私の狙いでした。例えば大学生なら、ふだんは赤ちゃんの事を考えないけれど、その光景を目撃して『赤ちゃんも映画館で映画を観られるんだ』と印象に残るでしょう。それでいつか結婚したとき、この記憶が残っていれば、子育て中も家の外でエンターテインメントに触れることができると思えて、出産・育児にポジティブになれると思うんです」
そして今年5月16日からは2作目となる『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』が全国各地で公開されている。1作目では小学生以下の観客に無料でタンバリンが配布されたが、今回は、「泣きながら、笑いながら、喋りながら見ていいんだよ」というメッセージから、パリパリカシャカシャ音が鳴る「パリパリPARTYハンカチ」が第1弾入場者プレゼントとして配布されている。※各劇場で在庫がなくなり次第配布終了
良質なコンテンツを地道に作りながら、一方ではこうして映画製作やコンサートイベント、グッズ販売などさまざまなジャンルに進出している「シナぷしゅ」。番組関連書籍は2025年1月時点で31冊発行し、累計発行部数は約61万部以上だ。
局内では4月1日付で「シナぷしゅ事業部」が新設され、社内での存在感も高まるばかり。令和を代表する赤ちゃん番組の次なる仕掛けは何なのか。
聞けば、今度は「ヨルぷしゅ」(6月27日深夜24時12分放映)だ。家事や育児が一段落した夜の時間帯に、肩の力を抜いて楽しんでもらえる、大人を応援する内容だという。具体的には、赤ちゃんを笑わせる芸を競う「A-1グランプリ(アカチャンワングランプリ)」や、夫婦のあるあるを題材にしたショートアニメなど予定している。
「大人版を作ってみたいと言ったら、たくさんのスタッフが賛同してくれて、あれよあれよという間に企画が立ち上がりました。『シナぷしゅ』由来の、他では見られない独特な世界観で、見る人のセロトニン神経を活性化させます。『シナぷしゅ』を知らない人でも楽しめるものを目指します」
仕事や育児に疲れた大人たちの睡眠の質にもコミット……ますますファン層が拡大するかもしれない。


