老後資金を狙う
金融機関の“魔の手”

では、この必要額をどうやって貯めるのか、誰にとっても頭が痛い問題だ。「豊かな老後のためには資産運用が必要です」と金融機関は盛んにPRしているが、信じていいのだろうか。

岩崎氏は「中高年はリスクを取らずに定期預金に預けておくべき。特にデフレ時代の今は、預金しておくだけで価値が高まります」と運用を否定する。

「金融機関では3%で運用した場合などと試算していますが、国債の利率が1%程度のときに3%で運用するのは厳しい。まして素人には無理です」

経済評論家の山崎元氏は「非課税で運用できるものを無駄なく活かす」ことを提案している。「例えば自営業なら確定拠出年金(401k)の個人型に入ると年間80万円以上を無税で積み立てることができます」。そのうえでリスクが取れるお金で運用を考えるのであれば「分散投資されたもの、手数料が低いものがよく、投資信託でいえば株価指数などに連動するインデックスファンドを買うのが現実的です」。

ただし、購入するときには金融機関に相談しないこと。「彼らは手数料が高い商品をすすめるはずです。例えば米国のハイイールド債券に投資して、ブラジルレアルで為替ヘッジをして、毎月分配金が200円出ますなどと、超ハイリスクな商品のメリットに見える部分のみ強調して誘導することが珍しくない。法令に触れない範囲で欺すくらいのことをプロはやりますよ。特に近年は、金融機関の“魔の手”が肉食化しています」。そんな山崎氏がすすめるのは、(1)日本株インデックスファンド50%、(2)先進国の株式に投資するインデックスファンド25%、(3)新興国に投資するインデックスファンド25%という2対1対1のポートフォリオだ。

「これで期待利回りが5.5%くらいです。ただ、かなりまずい事態が起こったときは投資金額の3分の1が吹っ飛ぶことを覚悟してください。それでも長期的には預金より利回りがいいと思います」

このポートフォリオの意味が理解できなければ運用は危険だ。「そのときは金融機関に狙われないように個人向け国債10年ものを買うのも手ですね。10年間は“魔の手”から逃れられるし、変動金利だから将来の金利上昇にも、ある程度対応できます」。

(文・山本信幸(ジャーナリスト))