逆算してスケジュールを立て、動く

生徒たちは研修先の現地でどのような体験をしているのでしょう。卒業生に尋ねました。

「長野県の研修旅行ではツキノワグマの害獣問題について学びを深めました。レポートをそのテーマで仕上げて、クラス代表発表をしました。自分の好きなことを研究していく楽しさに触れた経験だったと感じています」

「中学3年生のとき、『平城京の発掘をする』班に入って、実際に土器を掘り起こす体験をしました。他の班とは全く異なる行程で、ほぼ丸一日平城京でスコップを持って泥だらけになっていた。特別な許可がないと入れないエリアに入れてもらい、発掘のお手伝いをさせてもらえたことは今も鮮明に覚えています」

「中国に行った際は、芸術選択で書道を取っていたので『毛筆がほしい!』と思い、書道の先生に相談をして西安にあるお勧めのお店を紹介してもらって訪れました」

目的地をひとつに絞ることも、たくさん巡ることも、班の自由。生徒たちが全行程を考えて、逆算してスケジュールを立て、動きます。

その結果、「(たくさん巡りたいから)お昼は歩きながら食べよう」と目的遂行に邁進したり、「○班が集合時間に間に合わない!」といったアクシデントが起こったりします。

平城京跡
写真=iStock.com/Gyro
※写真はイメージです

何が良くて何が悪いかも自己判断

あまりにも自由なので、「どこからはNGなのでしょう?」と卒業生に質問すると、「何がよくて何が悪いかも自己判断です。もちろん最終的に怒られるようなこともあるんですが」と笑っていました。

自己決定には責任をともなうものです。もし、最終的に怒られるような判断をしてしまったとしても、それもまた学びとなります。

ご家庭でも旅行に行く際に、地図を渡して、午前中の過ごし方だけお子さんに任せてみる、などの機会を設けてみても楽しいですね。子どもに対して、「え! こんなことに興味があったの?」という発見があるかもしれません。それに、時間的な感覚を身につけるチャンスにもなります。

生徒を信じ、自己決定の場を与えていく。これが渋幕の研修旅行の現地集合・現地解散に込められている狙い。私たちもその試みから学んでいきましょう。