救急、手術、回復支援まで幅広い疾患領域に対応
ストライカーは1946年、米国の整形外科医であるホーマー・ストライカー博士によって設立された。患者のためにと独自の創意工夫で開発を重ねた博士の姿勢が、後の数々のイノベーション創出へとつながっていった。現在、ストライカーは75を超える国と地域で事業を展開しており、5万3000人の社員が各国の医療従事者と連携し、毎年1億5000万人もの患者のQOL(生活の質)向上に貢献している。
「どのような特徴を持つ会社なのですかと、よく質問されるんです。例えば救急患者さんが病院に搬送され、手術を受け、ICU(集中治療室)に移り、その後回復のための期間を過ごす。そうしたペイシェント・ジャーニーを一貫してサポートする医療機器を取り扱う、ヘルスケアカンパニーと捉えていただければと思います」
日系大手電機メーカー、外資系企業で人事・経営企画関連のキャリアを歩み、2014年に日本ストライカー入社。統括事業本部長、副社長を経て21年4月より現職。
そう語るのは米国・ストライカーコーポレーションの日本法人・日本ストライカーを率いる代表取締役社長・水澤聡氏だ。2022年からの5カ年で策定された中期経営計画「Defy the odds」(予想を大胆に覆す)に基づく近年の目覚ましい成長によって、医療現場での存在感を日々高めている。整形外科領域において日本で初めて薬事承認を受けたロボティックアーム人工関節手術支援システム「Makoシステム」を成長ドライバーと位置付け、デジタル技術、ロボット技術、AIなどを取り入れた製品展開を見据えつつ、臨床ニーズを敏感に察知し、国内の医師や企業との独自のコラボレーションによる日本発の製品開発・ソリューション提供にも意欲的だ。
躍進の背景には水澤氏らリーダーと全社員の関係性の強さがある。
「Together with our customers, we are driven to make healthcare better.(顧客と一体となって、医療の向上を目指します。)というミッションを何よりも重視し、必ずここを起点に考え、行動しています。リーダーが繰り返し社員に語りかけることで、やがて企業のカルチャーとして根付き、イノベーションの推進力となっていくのです」(水澤氏)
従来の枠組みにとらわれず課題解決のために力を結集
疾患部位や治療方針によって専門領域に分かれる医療業界の構造に対して、医療機器メーカーもおのずと専門特化した部門を編成してアプローチするのが一般的とされる。日本ストライカーはそこにもイノベーションを起こし、医療現場の課題解決に資する体制づくりを推し進めてきた。これが、「One Stryker」である。
「当社には、七つの事業部門が専門性を重視しつつ部門間の垣根を越えた協力体制で医療現場と向き合う“One Stryker”の企業風土があります。一例として、『医療機器を導入したいけれど、コスト負担を抑えたい』という医療機関の要望に応えるため、複数の部門で連携してソリューションを提案したり、リース会社と協力してファイナンシャルプランを策定したりすることもあります。他にも、製品を安定的にお届けするためのロジスティクス戦略を構築したり、専門知識を持つ営業社員の育成を加速したりと、付加価値を生むために社員たちが自発的に力を結集しています。中期経営計画『Defy the odds』の下では、常時30超のプロジェクトが走り、100人超のメンバーが組織横断的に動いています。着実な成果創出によって、米国本社やアジア太平洋本社では日本を最重要マーケットと位置付け『日本に投資すべき』との機運が高まっています」
専門知識と誇りを持つプロフェッショナルへ
4月に拡張移転した新本社にはストライカーの幅広い製品を体験できるショールーム、ワークショップルームなどの施設を完備。あらゆるステークホルダーとの連携を促進し、共に成長していくという決意をらせん状のモチーフに込めた。
水澤氏は改めて、成長の核は「人」であると強調する。「年齢や経験、性別にとらわれず活躍する場があります。未経験で入社して間もなく顕著な実績を上げる社員もいますし、24年度のMVP社員は定年後再雇用で活躍するベテラン営業社員で、皆からの温かい称賛の拍手がうれしかったですね。また、各種研修を通じて医療の現場にソリューションを届けるプロフェッショナルな人財を数多く育成しています」
8年連続で「働きがいのある会社」(選出:Great Place To Work® Institute Japan)ベスト100入り。日本の医療機器分野では唯一のランクインとなるなど、エンゲージメントの高さは客観的にも評価されている。人事出身でビジネスリーダーへとキャリア変遷を遂げた水澤氏の道のりが示すように、一人一人に大きなチャンスを与え潜在能力を最大限引き出すカルチャーが、日本ストライカーにはある。
「自らの目標を達成するために戦略を策定し、周囲を巻き込みながら結果を出していく力、それがリーダーシップです。当社のリーダーシップ育成プログラムはどの会社にも負けないと自負しており、私自身の経験や信念を組織に還元して、さらに多くの次世代リーダーを輩出します」
※特定保守管理医療機器 一般的名称「手術用ロボット手術ユニット」 販売名「Makoシステム」 医療機器承認番号(22900BZX00325000)

医療の未来を生み出す新本社コンセプトは「Upward spiral」
日本ストライカーの新本社のコンセプトは「Upward spiral」。8階のレセプション(②)や9階の執務フロアのコラボレーションエリア(③)には「スパイラル」(らせん)のモチーフがあしらわれ、あらゆるステークホルダーとのコミュニケーション、さらなる連携を促進し、「医療の向上を目指して共に成長していく」という意志を視覚的に表現している。
レセプションに隣接するショールームは「Spiral Innovation Hub」(①)。約140平方メートルの空間に救急〜診断〜治療計画〜手術〜術後の回復支援まで、幅広い疾患領域に対応する製品を展示している。座学形式のセミナー、実践形式でのハンズオンセミナーに対応する「C-Lab」(④)や、整形外科手術支援ロボティクス「Makoシステム」のトレーニングやデモンストレーションが可能な「Mako Education Center」(⑤)、最大90人が着席できる「Auditorium」など、各種施設も充実。