100日間かけずに食洗器を買う方法

ここでその子は「投資」の意味を学びました。食洗機を買わなければ、肩もみのほうはできません。皿洗いだけだと、1年後の貯蓄額は3万6500円です。

ところが、稼いだお金の中から1万円の投資をしたことで仕事を増やすことができたので、1年後の貯蓄額は大きくなりました。1万円の買い物はちょっと勇気が要りますが、それを「もったいない」と思ってやめていたら、貯蓄は増えないのです。

しかし、もっと賢いやり方があることに気づく子もいるでしょう。

100日かけて皿洗い代を貯めるのではなく、誰かから1万円を借りて食洗機を買うのです。

すると、皿洗いも肩もみも365日フルにやれるので、合計貯蓄額は3万6500円の2倍で、7万3000円。そこから借りた1万円を返済しても、6万3000円が残ります。少し利子を取られたとしても、先に1万円を自力で貯めてから食洗機を買うより、残高は多いでしょう。

肩こり
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです

こうして、「貯蓄」「投資」「借入」の意味がわかりました。いずれの手段も、「働いてお金を貯める」上で、じつに合理的です。ここまでの話を聞くと、「利益を増やせるなら、借入に消極的になる必要はない」と考える人も多いのではないでしょうか。

「現実の企業経営」との決定的な違い

たしかに、設備投資の資金を借入でまかなえば、同じ金額を貯めるのにかかる時間を短縮できます。借入金とは、いわば「時間を買う」ことです。ひとつの仕事にかける時間を短縮できれば、その分、別の仕事に時間や労力をかけることで事業の幅を広げて、売上を増やすチャンスが生まれるわけです。

でも、現実の企業経営は子どものお小遣い稼ぎほど単純なものではありません。先ほどの皿洗い&肩もみ事業には、ふつうの企業が行う事業にはまずあり得ないほど有利な点がありました。それが何なのか、おわかりになるでしょうか。

子どもが皿洗いと肩もみで収入を得られるようになったのは、親御さんからその業務を提案されたからです。自分から「お手伝いするからお小遣いちょうだい」と提案したわけではありません。いわれたとおりに皿洗いと肩もみをすれば、お母さんやお父さんが約束どおりお小遣いをくれるでしょう。

つまりこの事業は、提供するサービスにお金を払ってくれる「お客さん」が存在することが、最初から確定しているのです。子どもの皿洗いや肩もみが少し下手だったとしても、わが子をクビにしてよその子を雇う親はいません。つまり、競合他社もいないのです。