国内重視の「安定志向層」から好まれている可能性

さらに、最近の大手企業に多いグローバル志向とは逆行して、ニトリは今なお国内比率が高いことも支持を広げている大きな要因であろう。同業の2番手である良品計画の海外売り上げ比率55%、海外店舗比率68%と比較し、ニトリの海外売り上げ比率は6%、店舗比率でも17%にとどまる。過去10年間で海外店舗比率は3倍になったとはいえ、国内事業で必要な人員数も相当なものだ。

ニトリ本店
ニトリ本店(画像=禁樹なずな/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

昨今、世間一般における新入社員のグローバル意識は低迷しており、海外で働きたくない人は6割に上るとされる。国内事業のボリュームが大きいニトリにとって、大手企業入社と国内配属確約の両立を約束することで囲い込むことができる。多数派である安定志向層から好まれる要素が揃っているというわけだ。

さらに、2023年からは、4年目以上の社員を対象に、東京・大阪の本部通勤を希望できる「マイエリア制度」も導入された。本部通勤による不利益はなく、転勤者に対しての手当が拡充される。限られた地域内でワークライフバランスを取りながら過ごしたい、グローバル化を推進する大手企業で働きたい、こうした「二律背反」を両立する魅力的な制度と言える。

グローバル志向にとっても好都合の制度

一方で、こうした実情や地域固定での勤務希望制度の恩恵を受けるのは安定志向層だけではない。社員の多くがグローバル志向である場合、グローバル化を加速している企業であっても、人事上の都合で望まない国内事業に配属される不幸な人が大量に生まれてしまう。しかし、国内勤務を望む人が一定数確保されていれば、グローバルで活躍できる可能性も高まるというものだ。

このように「転勤せずキャリアを積みたい」派にも、「海外駐在・全国転勤でバリバリ働きたい」派にも、柔軟な選択肢が用意されている。ニトリには、こうしたキャリアの多様性が認められ、事業ニーズと入社希望者の志向バランスが備わっている。こうした要因が就活生からの人気を得ている秘訣なのかもしれない。