「お餅」と同じくらい窒息しやすい食べ物

日本人がのどに詰まらせる代表的な食べ物と言えば「お餅」です。お年寄りがお餅をのどに詰まらせて……というニュースを新年早々に見かけることは珍しくありません。なんと、海外では「ニューイヤー・サイレントキラー(新年の静かなる殺し屋)」などと揶揄されています。

たしかに、お餅はモチモチしていて、咀嚼によって細かくしにくいですよね。

しかし、実はお餅と同じくらい、窒息しやすい食べ物があります。それは「パン」です。

食パン
写真=iStock.com/key05
※写真はイメージです

一見詰まらせにくいように思えますが、パンは繊維質なので、噛む力が低下した高齢者にとっては細かくしにくい食べ物になります。また、スポンジ状のため、ひとたび気道のほうに留まるとかなり危険です。水分を吸いこんで膨らみ、気道の入り口を完全に塞いで窒息させます。

高齢になればなるほど、どんな食べ物でも油断できません。ちなみに、気道に食べ物が入っていくときには、「ギュッ」という独特の飲みこむ音がします。一緒に食事をしているときに相手からこのような音が聞こえたら、口の中をすぐに確認して、呼吸が変わっていないかを確かめてください。

△このような危険を避けるには……

・詰まらせやすい食べ物は、あらかじめ細かく刻んでおく。
・周囲の人が見守っているところで食事をする。
・飲みこむときの「音」に注意する。

「熱すぎる飲み物」を飲むと食道がんになりやすい

おばあちゃんが熱々の緑茶を持ってきて、ふーふーしながら口をつけたら「猫舌だね」なんて笑われて……。

日本によくある、ほのぼのとした光景の一つですね。ただし、おばあちゃんの愛情たっぷりとはいえ、急須から注がれた直後の熱々のお茶を飲むのは、死ぬ危険性を高めてしまいますので注意が必要です。

その理由の一つとして、熱い飲食物は「食道がん」になる危険性を高めるという研究結果が数多く報告されています。日常的に熱い飲食物を摂取していると、食道が刺激を受け、食道粘膜の細胞が変異して、がん化する可能性があるのです。特に高齢者は、熱さを感じる神経が鈍くなっているので、熱すぎるものをあまり抵抗なく飲みこむことができてしまいます。

以前、私が麻酔科医として病院に勤務していたとき、食道がんの手術を受けるご高齢の男性を担当しました。幸い手術は無事に終わり退院されたのですが、その半年後、今度はその男性の妻が、同じく食道がんとの診断を受け、手術することになったのです。

ご夫婦ですから、遺伝的要因によるものとは考えられません。詳しく話を聞いてみると、夫婦で熱いお茶を飲むのを日課にされていることがわかりました。

もちろん、一概にそれだけが原因とは言えないものの、家庭内の習慣という環境的要因による発がんとも考えられ、医師としてとても驚いたことを覚えています。