熱い飲み物は「誤嚥性肺炎」を引き起こす
熱いお茶を飲むことのもう一つの危険性は「誤嚥性肺炎」です。
日本人の死因ランキングは長年、1位「がん」、2位「心疾患」と変動がないのですが、近年になって3位に「老衰」、4位に「脳血管疾患」、5位に「肺炎」、6位に「誤嚥性肺炎」といった病名がランクインするようになりました。
「誤嚥性肺炎」とは、飲食物や唾液などが、細菌とともに継続的に気道内へ流入した結果として起こる肺炎のこと。原因は先ほども説明したように、歯の本数の減少や咀嚼力の低下、そして微細な脳梗塞にもとづく咳嗽反射の低下が関与しています。
さらに、実は、この咳嗽反射の低下は「飲食物の温度」によっても生じやすいことがわかっています。もともと高い温度の飲料水は、身体にとって「飲みこみやすいもの」と判断されるため、誤嚥しやすいのです。そのうえ歳を重ねると、微細な脳梗塞によって、「むせ」症状が出ることなく、簡単に気道内に流入してしまいます。
本来、気道は無菌状態でなくてはなりませんが、誤嚥した飲食物は細菌などの微生物が混ざった不潔なもの。加えて高齢者は、歯周病や入れ歯などで、口腔内環境が不潔な状態に陥っている可能性も高いでしょう。そのため、熱いお茶ばかりを飲んでいると、誤嚥による気管支炎から肺炎を起こしてしまう可能性があるのです。そして、その肺炎が重篤化すれば、呼吸困難や敗血症に至って死んでしまいます。
△このような危険を避けるには……
・お茶は60度程度に冷ましてから飲む。
・こまめな歯磨き、入れ歯の手入れで口腔内をきれいに保つ。
・定期的に歯科医に通い、虫歯や歯周病のトラブルを早期に解決しておく。
実は危ない「2日目のカレー」
高齢者にとって「食中毒」は、死の危険性が高い病気です。
食中毒は、微生物や毒物が入った飲食物を口にすることで起こります。飲食店で発生した食中毒が定期的にニュースで報じられますが、その原因は「黄色ブドウ球菌」「サルモネラ菌」「カンピロバクター」などの微生物によるものです。
なかでも、病原性大腸菌と呼ばれる「腸管出血性大腸菌」による食中毒は、腎不全を併発して死ぬこともあります。2012年から日本国内で牛レバーの生食が禁止されたのは、これが原因です。
いずれの食中毒も、不衛生な環境や調理法によって発生することが多いのですが、実は、一般家庭でも食中毒が起こる可能性があるのです。
カレーやシチューなどスープ状の煮こみ料理を作ったとき、一度では食べ切れないこともあるでしょう。その際、余った分を冷蔵庫に鍋ごと入れていませんか? そして翌日、冷蔵庫から出してそのまま温め直し、「2日目のカレー」として食べていませんか? この保存方法と再調理法は、食中毒を引き起こすことがあります。