「ただの上級国民予備軍になりたいか」という問いかけ
このドラマの生徒は、勉強のできる子たち。中学受験を乗り越え、高偏差値の中高一貫校に入学し、東大を目指す。読解力もあるから、御上先生の言うこともすぐに理解できるし、反応できるけれど、おそらく受験の時期になると受験ばかりに意識が向いてしまうでしょう。
僕自身、東大に入って感じたことは、「何も考えず、迷うことなく東大に受かるやつって多いんだな」ということです。御三家をはじめ、東大に進学するのが当たり前だという学校が存在します。その事実を受けとめたうえで、僕は彼らに「何のために勉強しているんだ?」「東大に受かった上で何をしたいんだ?」「それを考えていなかったらダメだぞ」というメッセージを送りたい。それが、第1話の御上先生の「君らはただの上級国民予備軍だ」というセリフにつながっているんです。

東大に入って、うつ病になったという人も少なくありません。理科三類(理三)に受かって医学の世界に入ったけれど全然楽しくなくて、いちばん楽しいのは休日に東大の数学の問題を解くこと、というツイートが以前バズッていましたし、僕の友人も、5浪して、理三に受かったけれど、10回連続、合格後も東大入試を受けています。もちろん、それが悪いこととは思いませんが、でも僕は、そういう子たちはもっと「生きる実感」が必要なんじゃないかと思うんです。
「弱者に寄り添う人こそ真のエリート」というセリフ
この先ドラマは、どんな展開になっていくか。
第1話で御上先生が「真のエリートが寄り添うべき他者とは、弱者のことである」と言いましたが、この「弱者をどう救うか」というのが、今後の展開につながっていきます。
先に挙げた「生きる実感」というのは、他者に貢献することから湧いてくる。ただ自分のためだけに、他人より多く給料をもらえるようになるために受験勉強するのは虚しくないか。「そんな虚しい人生で、君たちはいいの?」と、このドラマは問い続けていきます。
僕はむしろ、「受験がうまくいかなかった人」にこそ、このドラマを見てもらいたいですね。今の世の中、大学受験や高校受験よりもっと大切なことはあるのに、やはり、受験で不合格になると絶望的な気分になってしまう。そういう人が、このドラマを見ると、視野がちょっと広くなるんじゃないかなと思うのです。
構成・文=池田純子
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中に開発した独自の勉強術を駆使して東大合格を果たす。2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教え、教師に指導法のコンサルティングを行っている。日曜劇場「ドラゴン桜」の監修や漫画「ドラゴン桜2」の編集も担当。著書はシリーズ45万部となる『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大算数』(いずれも東洋経済新報社)ほか多数。