建築費用の高騰や建設業界の人手不足、また環境意識の高まりなどを背景に、今、既存(中古)物件や既存の建物の再生、有効活用への関心が高まっている。そうした中、そのけん引役として存在感を高めているのが大和ハウスグループだ。同社グループは2018年に既存住宅の売買仲介、買取・販売、修繕・改修などを強化するため、「Livness(リブネス)」ブランドをスタート。さらに昨年、非住宅分野を対象とする「BIZ Livness(ビズ・リブネス)」を本格始動し、事業施設、商業施設を保有するオーナーや投資家からも支持を集めている。大和ハウスグループによる不動産ストック事業の特徴、魅力はいったいどこにあるのだろうか――。

他社施工の物件も含めワンストップで対応

「例えば今、築30年を超える倉庫や工場は全国に約20万件あり、全体の5割以上を占めるといわれています(※)。また、オフィスビルや商業施設なども老朽化した物件が全国に大量に存在しています。そうした状況で私たちは、スクラップ・アンド・ビルド以外の発想がますます重要になっていると考えています」

※国土交通省「平成30年法人土地・建物基本調査」より。

大和ハウス工業の平井聡治氏は「BIZ Livness」を立ち上げた思いをこう説明する。確かに既存物件の利活用は環境負荷の低減、建築コストの削減に大きく貢献する。まさに時代が必要とする事業といえるだろう。

大和ハウスグループでは、戸建て住宅だけではなく、これまで物流施設や工場、オフィス、店舗、医療・介護施設など幅広い新築物件を手掛けてきた。また商業施設やホテルの運営管理を行い、各種テナント誘致でも成果を上げている。そこで培ったノウハウが「BIZ Livness」にも存分に生かされているというわけだ。

平井聡治(ひらい・そうじ) 大和ハウス工業株式会社 東京本社 経営戦略本部 リブネス事業推進部長
平井聡治(ひらい・そうじ)
大和ハウス工業株式会社 東京本社 経営戦略本部 リブネス事業推進部長
1983年4月大和ハウス工業に入社、大阪本店住宅営業所に配属。2005年4月大阪中央支店支店長に就任。12年10月富山支店支店長に就任。17年4月リブネス事業推進部長に就任。

自社施工物件だけでなく、他社施工物件の再生にも力を注ぐ同社グループには現在、「遊休不動産を活用できないか」「保有施設でテナントの撤退が続いている」「工場を売却したらいくらになるか」など、多種多様な相談が寄せられているという。

「まさにそうした一つ一つの課題の最適解を見いだすことが私たちの仕事です。蓄積してきた経験、知見に基づき、『今、こんなリノベーションが有効』『この地域ならこのようなテナントのニーズが高い』『売却と賃貸の収益予測はこうなる』などと具体的にご提案しています。もちろん提案するだけでなく、実際に売買仲介をしたり、当社で物件を買い取って販売したり、新たなテナントを誘致したり、ワンストップでサービスを提供しています」

施設の再生に当たっては“用途変更”も多く手掛けており、地域や市場のニーズを見極め、商業施設をホテルへ、工場を倉庫へ、また博物館を複合商業施設へといったプロジェクトを全国で実現している。

実際に相談をした企業は“スピード感”も高く評価

「BIZ Livness」の優位性。それは一言でいえば、課題を解決する“多彩なスキーム”だ。大和ハウス工業とそのグループ会社は、建物の設計、施工はもちろん、プロパティマネジメントやメンテナンス、リーシングなど、幅広い機能やサービスを有している。それらを組み合わせることで、多様な手法を構築し、顧客ごとに適した選択肢を提示することができるのである。

「不動産は社会や市場環境の変化によって、その価値が急落するリスクを抱えています。そうした中で、ハード面のリニューアルにとどまらず、市場や社会の先行きを見据えた不動産の再生、新たな価値創出を行うことが私たちの役割だと考えています」

加えて、大和ハウスグループに実際に相談をした企業などからは、その“スピード感”も高く評価されている。工場を売却したあるメーカーは、「売却完了まで3年ほどを想定していたが、半年しかかからなかった」と驚く。

「お客さまにとって迅速な資金の確保は経営上極めて重要。その点は強く意識してサポートをしています」と平井氏は言う。それができるのは、同社グループが自ら物件を買い取り、リノベーションや用途変更によって建物の価値を高め、販売までを一貫して担うことができるからだ。これが「BIZ Livness」の大きな強みである。

そしてもう一つ、大和ハウスグループがショッピングセンターなどを運営管理し、全国で展開していることも注目すべきポイントだ。

「店舗などを運営していると、利用者のニーズの変化を実感し、事業の採算面も把握することができる。現場での体験が説得力のあるご提案につながっていると思っています」

大和ハウスグループの「ビズ・リブネス」が選ばれている理由

都市部、地方双方のリアルな課題と向き合う

近年は時代を反映し、ESG経営や脱炭素を重視する企業も増えている。その点でも大和ハウスグループは太陽光発電や壁面・屋上緑化など確かな実績を持ち、「BIZ Livness」においてもそれらを活用している。

「また最近は、相続や事業承継が関係するご相談も増えています。専門知識が必要な分野で、円滑に不動産を引き継ぐソリューションを提案することにも力を入れています」

全国ネットワークを持つ大和ハウスグループは、都市部、地方双方のリアルな課題と日々向き合っている。どうすれば既存の不動産の可能性を引き出せるか。「日々、その経験則が蓄積されている」と平井氏は言う。

「そうした中で私たちは、建物を再生するだけでなく、その先にあるお客さまの収益性の向上やビジネスの成長、また地域活性化などに貢献していきたい。そう考えています」

不動産の活用方法が企業価値に直結する現在、事業施設や商業施設を持つ事業者にとって「BIZ Livness」の取り組みは見逃せないものとなりそうだ。