マウス実験で証明してみた
さて、どうすれば証明できるでしょうか?
こんな実験を考えました。まず、マウスが見たことのない同じ物体を2個用意します。それを部屋の隅にそれぞれ置きます。マウスはその部屋に入ると、見慣れない2個の物体を探索しにいきます。見慣れないものを探索するのは、マウスの習性です。30分後、今度は1個の物体の位置を変えておき、またマウスを部屋に入れます。
するとマウスは先ほどと位置の変わった物体を探索しにいきます。見慣れない場所にあるからです。もともとの位置を記憶しているので、移動したことが分かり、探索するわけです。
では、30分ではなく、24時間後に同じ実験をするとどうなるか? マウスは、移動していない物体も、移動した物体も、同じ時間だけ探索するようになります。もともとの位置を忘れてしまっていて、2個とも新しいものと認識しているのです。
つまり、マウスが探索にかける時間を計測することで、記憶しているか忘れているかがはっきりするという仕組みなのです。ここまでが、準備です。
ニューロン集団を強制的に活動させた結果…
24時間後に、マウスはもとの位置を忘れてしまっていました。
では、記憶の痕跡は残っているのでしょうか? 思い出せないだけで、痕跡は脳に存在しているのでしょうか?
それを明らかにするため、僕たちは、マウスが最初に部屋に入れられたときに活動したニューロンを特定し、光を感じるように改変しました。そして、睡眠を経た24時間後に部屋に入ったとき、そのニューロン集団に光を当てて、強制的に活動させました。
すると、どうなったでしょうか?
マウスは、移動した物体だけを探索するようになりました。
24時間後には忘れているはずなのに(その証拠に光を当てなければ両方の物体を探索する)、ニューロン集団を強制的に活動させたら、“思い出した”のです。サイレント・エングラムは、存在していたと証明されたのです。疑いようのないきれいなデータが得られました。


