顔料や印刷インキ、繊維、プラスチックの着色剤、ウレタン樹脂、コーティング剤――。「技術の深化と革新」を重ねてきた大日精化工業の製品は、IT機器や食品包装材など、身の回りのさまざまなモノに活用されている。第1回から環境フォト・コンテストへ参加している同社の環境・サステナビリティに関する取り組みについて、専務執行役員/CSR・ESG推進本部本部長の駒田達彦さん、執行役員/CSR・ESG推進本部統括部長の中安智さんに聞いた。

皆さんとの「共創」で期待に応えたい

――取り組みの方針について教えてください。

中安 智さん 大日精化工業株式会社 執行役員/CSR・ESG推進本部 統括部長
中安 智さん
大日精化工業株式会社
執行役員/CSR・ESG推進本部 統括部長

【中安】1968年に制定した当社の社是「必達」には、「カラーエイジを担う大日精化の社員として誇りを持って仕事を進めよう」という言葉が添えられており、掲げた五つの項目の一つに「仕事を通じて社会に貢献し大日精化を最高の企業体にしよう」という一文があります。まさしく「サステナブルな社会への貢献」という、この時代に企業が求められている役割を意識しながら活動してきたのです。企業は何のために存在しているかというと、自社の利益を追い求めるだけではなく、社会全体の成長を後押しするためです。暮らしをさまざまな側面から支え、多くの関わりを持つ私たち化学メーカーが期待されていることは、皆さんと一緒に新たな価値を共創し、環境に貢献できる製品を積極的に開発していくことでしょう。

環境負荷の低減と住環境の快適性向上を両立

――どのような成果が出ていますか。

駒田達彦さん 大日精化工業株式会社 専務執行役員/CSR・ESG推進本部 本部長
駒田達彦さん
大日精化工業株式会社
専務執行役員/CSR・ESG推進本部 本部長

【駒田】当社は国内外のGHG排出量を2030年までに48%削減(2019年度比)することを目標に掲げており、廃プラスチックのリサイクル率に関しては、毎年1ポイントずつ引き上げていくことを目指しています。環境配慮型の製品開発については、着々と具体的な成果を重ねています。例えば、CO2を原料とする「ヒドロキシポリウレタン樹脂(HPU)」を使用したコーティング剤があります。HPUで表面を加工した紙はガスバリア性がアップして酸素を通しにくくなり、食品トレーとしても用いることが可能です。当社の技術によって紙に「新たな機能」を与えることで、紙の用途展開を広げます。

「サステナビリティ貢献製品」として開発した遮熱塗料は、太陽光の赤外線を反射させる機能があります。建物の屋根や外壁に使用することで室内温度の上昇を抑えることができますから、空調設備にかかるユーティリティコストの低減や、快適な住環境の維持に役立ちます。また、ペットボトルのラベルやパッケージなどに「脱離性を付与したインキ」を使うことにより、資源の再利用に役立ちます。

創業当時からの大日精化工業のベースである「色」も機能の一つという考え方から、機能性付与を前面に押し出し、より企業価値を高めていく活動にシフトしていく必要があると考えています。コストの課題などにも挑みながら、社会のニーズにマッチした付加価値の高い製品を開発提供していきたいと思っています。

企業の取り組みを知っていただく機会に

――環境フォト・コンテストには第1回から継続して参加されています。

【駒田】「第29回環境フォト・コンテスト2023」より、募集テーマを「環境色彩」から「地球の色、暮らしの色」に変更しました。世界にあふれている自然や暮らしの中にある多様な色は、人間のさまざまな感情を呼び起こします。この募集テーマには、色を通じて感動をたくさんの人々と共有したいという思いを込めています。

自然の中にある色を切り取った優秀賞作品「千里塚の朝」は、朝の澄んだ空気の中であかね色に染まった雲が水面に映り、山並みが自然の壮大さを感じさせます。そして、自然環境がつくり出した偶然の美しさに目を奪われました。自然や生活の中で私たちが見ている色は、光、物体、目の作用によって認識しています。このような素晴らしい風景を目にすることができるのも、豊かな色をもたらしてくれる自然があるから。そのことを、改めて教えてくれる1枚です。

【中安】SNSの普及もあって、写真や動画などの視覚的な情報があふれています。子供から大人、海外の方々まで、見てすぐにメッセージが伝わる写真を通じて環境への思いを届けられるのは、当社にとっても非常に意義があることです。

新中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)の基本戦略の一つとして「サステナブル社会の実現に向けたESG重視の経営促進」を位置付けています。自社だけでなく、サプライチェーン全体を捉え、原材料の調達から当社製品を使用した製品の廃棄まで、ライフサイクル全体への配慮に注力しています。優秀賞作品に写っている水はまさしく貴重な資源で、当社でも生物多様性保全の観点から、汲み上げる水の削減、再利用にも取り組んでいます。このような私たちの活動と作品を重ね合わせて、企業の環境問題への取り組みを皆さんに広く知っていただく良い機会になっていると感じます。

●「環境フォト・コンテスト2025」入賞作品

●募集テーマ:地球の色、暮らしの色

2025優秀賞「千里塚の朝」大嶋俊三さん
2025優秀賞「千里塚の朝」大嶋俊三さん
2025佳作「黄昏に染まる室蘭」深作典孝さん
2025佳作「黄昏に染まる室蘭」深作典孝さん
2025佳作「軒下の春」西岡尚央さん
2025佳作「軒下の春」西岡尚央さん