“排除”には法的対応が可能
まず重要なのは、学校や教育委員会に、そうしたPTAに学校施設を利用させないよう求めることである。先述したように、学校教育法137条は、会員限定サービス団体に学校施設を優先的に利用させることを禁じている。公立学校の場合には、公共性のない会員限定サービス団体に施設を貸すことについて、住民監査請求(地方自治法242条)や住民訴訟(同法242条の2)を提起することもできよう。
また、PTAが、学校施設を使う行事や学校で配布するプレゼントについて、特定の子どもを排除すれば、他の子どもにいじめのターゲットを示すことになりかねない。このため、学校に対し、いじめ防止対策推進法に基づくいじめ防止措置として、PTAの会員限定行事に学校施設を貸さないこと、また、プレゼントは学校外で配布することを求めることもできるだろう。
最後に、登校班だが、登校班の名簿に掲載されていなくても、登校班と同じ時間に同じペースで公道を歩くことは禁じられていない。登校班に、「お前は来るな」と命じる権限もない。登校班問題については、外されても遠慮せず一緒に歩けばよい。登校班を引率する大人が、実力で排除すれば暴行罪(刑法208条)である。
このように、非会員の排除に対しても、一定の法的対応が可能である。さらに、こうした法的対応に頼らなくとも、プレゼント配布や行事の日だけPTAに加入するという方法もある。プレゼントや行事の後、速やかに退会すれば、PTAから業務負担を押し付けられることもない。卒業式のプレゼントの場合には、最終学年の3月だけ入会すればよいだろう。
PTAトラブルは“法令遵守”で解決できる
PTAに関するトラブルは、①PTAが、加入の任意性・活動内容・会員の負担等を明確に説明すること、②PTAが、学校施設を利用した活動や学校内でのプレゼント配布で、非会員やその保護する子どもを排除しないこと、③学校は、PTAが会員限定サービスを行う場合には、学校施設を利用させないこと、の3つの条件を充たせば解消する。
これらはいずれも、PTAと学校に対する法の要求であり、冒頭でも述べた通り、PTA問題は、遵法によって解決できるのである。
加入の任意性が周知徹底され、非会員の排除がなくなれば、形式面のみならず、実質面でも、PTAは入退会自由のボランティア団体となる。完全に入退会自由になれば、過剰な負担を押し付けるPTAは会員がいなくなり自然消滅し、他方、楽しく有意義な活動をするPTAには多く人が集まり繁栄存続することになるだろう。
もちろん、入退会自由のPTAでも、会員同士の人間関係のトラブルや不合理な業務があったりして悩みは尽きないだろう。しかし、自分の意思で入会している会員の活動なのだから、法や周囲がとやかく言う問題ではない。
強制加入PTAに対して批判的な発言をすると、「子どものために良いことをやっているのだからいいではないか」との声が上がることがある。しかし、いくらいいことをやっているつもりでも、それが他者の「結社の自由」を侵害していたのでは本末転倒である。PTAの活動が大事だと思うならば、法令遵守を徹底した上で、活動を組み立てねばならない。