PTAは“いじめ対策”の法的義務がある

(3)いじめ防止義務の担い手としてのPTA

PTAは、学校内で子どもと深く接触する活動を行うことも多い。このため、PTAは、いじめ被害者から相談を受けることがある。一方、PTAがいじめを誘発してしまう場合もある。では、PTAは、いじめとどのように関わるべきか。

まず、PTAを構成する保護者には、「その保護する児童等がいじめを行うことのないよう、当該児童等に対し、規範意識を養うための指導その他の必要な指導を行う」努力義務がある(いじめ防止対策推進法9条1項)。

また、国及び地方公共団体には、いじめ対策のために「地域社会及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他必要な体制の整備に努める」義務がある(同法17条)。PTAは、「地域社会及び民間団体」に含まれるだろうから、学校からいじめ対策のために連携を求められる立場にある。

これらの規定からすると、PTA会員は、その活動においても、自らが保護する子どものいじめを防止する責任を負っている。また、いじめ対策のために、学校は、PTAに協力を求めることもできる。PTAは、いじめ対策に積極的に取り組むべきだし、それ以前に、PTA活動が子どものいじめを誘発したり、助長したりしないようにする法的義務を負う。

部屋で落ち込んでいる男の子
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「学校」と「PTA」は切り分けが必要

次に、学校とPTAの関係を整理しよう。PTAは、学校の一部局や下部組織ではなく、独立した団体である。このため、個人情報の管理や財政の面で、適切な切り分けが必要である。

(1)個人情報・財政の管理

まず、重要なのが、個人情報の管理である。先に述べたように、学校によるPTAへの同意なき個人情報の提供は、緊急性があるなど、よほどの正当化事由がない限り違法である。学校が、PTAに名簿を提供する場合は、全員から同意をとるべきだろう。その際、強制・抑圧の契機を払拭するために細心の注意が必要なことは、言うまでもない。

また、PTAの予算から、学校備品費や行事費を支出する場合がある。しかし、学校の費用は、授業料や施設利用料・学用品費として徴収するか、公費で負担すべきである。

地方財政法は、都道府県立高等学校の建設事業費、公立小中学校の建物の維持・修繕、職員の給与について、住民への負担の転嫁を禁じている(同法27条の3、同法27条の4及び同施行令52条)。PTAが学校に金銭や物品を寄附する場合には、慎重な検討を行った上で、適切な手続を踏む必要がある。特に、公立学校の場合は、地方財政法との関係に注意が必要である。