「警察に通報か」「学校で対処か」という根拠

この法律の主な関心は、文部科学大臣・自治体・学校らに「いじめ防止基本方針」の策定を義務付け(対策法11、12、13条)、学校におけるいじめの防止・早期発見のための対策を行うよう求めるところにある(対策法15、16条)。学校は、いじめが起きてしまった段階では、次のような措置をとる。

第一に、①犯罪型のいじめについては、学校だけで対処せずに、適切に警察と連携すべきことが指摘されてきた。第23条6項は、犯罪行為に対しては所轄警察署に適切に通報し、連携して対応すべきことを定めている。

日本のパトカー車両のサイレン
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第二に、犯罪に至らない②コミュニケーション操作型のいじめの場合も、いじめの相談や通報を受けた場合には、学校は「速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置」をとることを求められる(対策法23条2項)。

いじめの事実が認定された場合は「いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行う」とされる(対策法23条3項)。

ここで重要なのは、担任だけに抱え込ませず、「複数の」教職員が関与すること、専門家の協力を得ること、指導は「継続的」に行うことだ。特にコミュニケーション操作型のいじめは、長期にわたる人間関係の調整が必要なため、対応の「継続」性は極めて重要だろう。

いじめアンケートは“対策法”の成果

いじめが生じた場合には、学校には必要な支援や措置をとることが求められ(対策法24条)、懲戒(学校教育法11条)や出席停止(学校教育法35条)の制度を適切に運用すべきとされる(対策法25、26条)。

さらに、いじめが自死など極めて深刻な結果をもたらすことから、「児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑い」または「児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑い」がある場合には、いじめの「重大事態」と認定し、調査委員会を設置し、詳しい調査を行うことが求められる(対策法28条)。

近年、いじめ事件をめぐる報道で「調査委員会」の報告書や定期的に行われるいじめアンケートが紹介されたりしているが、これらはいずれも対策法の成果だ。

関連して、統計を見てみよう。対策法制定後、文部科学省は毎年、いじめの状況の統計を出している。それによれば、いじめの認知件数は2013年度の合計約20万件から右肩上がりに増え続け、2020年度に減少に転じるも、2021年度は再び増え、年間約61万件となっている。認知件数の増加は、必ずしもいじめの増加ではなく、学校がいじめの認知に努力した結果の可能性もある。また、2021年度に認知された約61万件のいじめのうち約49万件(80.1%)は、対策などにより解消している。