「やばい」が子供の成長を奪っている

人とのやりとりでは、頭の中でことばを選ぶ瞬間が必ずあるものです。その選択肢の幅は、語彙力の問題だけではなく、適切に状況を読みとる力にも左右されます。

岸圭介『学力は「ごめんなさい」にあらわれる』(筑摩書房)
岸圭介『学力は「ごめんなさい」にあらわれる』(筑摩書房)

質のよいコミュニケーションは、繊細なことば選びとセットなのです。ことばを使うときに一切の状況をふまえないのは、残念ながら「何も考えていない」ということになります。

「やばい」ということばは便利なものです。肯定的な意味でも、否定的な意味でも使うことができるからです。

しかし、あらゆる場面で使うことができるということは、結局は状況を考えずに使ってしまいがちです。つまり、話し手が思考する場面が少ないのです。これが一律にことばを使うことの弊害です。

子どものことばづかいを正す意図は「コミュニケーションを通じて思考する場面を増やす」という点にもあります。

人とやりとりをするたびに、場にふさわしいことばを選んでいる子とそうでない子。両者の間には、「考える」という経験の積み方に、はっきりとした差が生まれるのです。