「海に眠るダイヤモンド」は活気あふれる時代を忠実に再現
端島の所有権は、2001(平成13)年、三菱マテリアルから高島町へ。さらに同町の長崎市編入に伴い2005(平成17)年には長崎市へと移転している。そして、2009(平成21)年から上陸ツアーがスタート。閉山から約30年を経て、誰でも島へ足を踏み入れることが可能になった。
ただし、崩落の危険があるため、上陸可能なエリアは島南部の見学通路部分のみ。日給社宅や地獄段、小中学校などのエリアへは足を踏み入れることはできない。日本初の鉄筋コンクリート造の高層住宅・30号棟などは見学できるが、外観のみ。
廃墟となったその姿から「軍艦島」との呼称がいつしか定着し、2015(平成27)年の世界遺産登録もあり、さらなる衆目を集めるようになった端島。「海に眠るダイヤモンド」で忠実に再現された各シーンは、残された廃墟群とともに、その活気あふれる時代を知る手がかりとしても貴重な作品だったといえる。
最終話、食堂の娘として端島に生まれ育ち、失恋の傷を負って島を離れた朝子(宮本信子)が2018年に島を再訪したシーンでは、島の現在と過去がオーバーラップした映像が見ものだった。島の最後の10年を看取った朝子が、第1話で「(端島は)廃墟なんかじゃない」と言った意味が、ドラマを通して見るとよくわかるのではないだろうか。
参考文献:『軍艦島の遺産 風化する近代日本の象徴』後藤惠之輔・坂本道德(長崎新聞社)
『軍艦島 奇跡の産業遺産』黒沢永紀(実業之日本社)
『私の軍艦島記』加治秀夫(長崎文献社)
『軍艦島 離島40年』坂本道德(実業之日本社)
『長崎游学4 軍艦島は生きている! 「廃墟」が語る人々の喜怒哀楽』軍艦島研究同好会監修(長崎文献社)
構成・文=加藤きりこ
編集プロダクション。国内外問わず、旅、歴史、アウトドア、サブカルチャーなど、幅広いジャンル&テーマで取材・執筆・編集制作を行っている。バスや鉄道、航空機など、交通関連のライター・編集者とのつながりも深い。編集した本に『秘境路線バスをゆく 1~8』『“軍事遺産”をゆく』『地下をゆく』(イカロス出版)、『攻防から読み解く「土」と「石垣」の城郭』(実業之日本社)、『路線バスの謎』『ダークツーリズム入門』『国道の謎』『図解 「地形」と「戦術」で見る日本の城』『カラーでよみがえる軍艦島』(イースト・プレス)、『ニッポン秘境路線バスの旅』(交通新聞社)、『2022年の連合赤軍 50年後に語られた「それぞれの真実」』(深笛義也著、清談社Publico)、『日本クマ事件簿』(三才ブックス)などがある。