女性・女系天皇実現に必要な初手とは
なぜ皇統は男系男子に限るのか。その根拠は極めて薄弱である。
日本の歴史のなかで、多くの女帝が誕生してきたことを踏まえるならば、その根拠は、明治時代に「そのように決めた」というところにしか求められない。
しかも、それを規定している皇室典範は、現在では一般の法律とかわらないもので、国会の議決でいつでも改正が可能である。
戦前の旧皇室典範は、皇室にのみかかわる「家憲」とされ、官報にも掲載されず、発表も非公式のものであった。その一方で、「典憲」ということばがあり、大日本帝国憲法と同格と見なされた。
したがって、帝国議会によって改正ができないものであった。そこが、戦後の新しい皇室典範とは決定的に違うのだ。
保守層、あるいは男系固執派には、いまだに旧皇室典範の考え方が受け継がれているように見える。本来なら、戦後に今の皇室典範が生まれたとき、「皇室法」と改称すべきだった。そうなっていれば、いつでも改正が可能な法律のイメージが生まれていたことだろう。
皇室典範を皇室法と改称する。手初めに必要なのは、その着手かもしれない。
放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。