ビタミンEや食物繊維を豊富に含み、アンチエイジングに有効な食材として知られるアーモンド。その人気の高さから、より手軽に栄養素を摂取しやすいアーモンドミルクも注目を集めている。アーモンド研究の第一人者である慶應義塾大学医学部の井上浩義教授と、「時間栄養学」を研究する愛国学園短期大学の古谷彰子准教授に、アーモンドやアーモンドミルクの効果、その知られざる魅力について語ってもらった。

日本人の食物繊維摂取量は、世界平均の最低ラインにも達していない。

――現代型の食生活は、生活習慣病などさまざまな健康リスクを招いていると言われています。「不規則な食事」「食物繊維不足」「高カロリー食」「生活習慣病」というキーワードの中で、井上先生が特に注目されるものは何でしょうか?

【井上】私が気になるのは、「食物繊維不足」ですね。欧米の栄養学の教科書には、「食物繊維の平均摂取量は1日に20~80g」と書かれていますが、現代の日本人の食物繊維摂取量は14g以下というデータもあり、世界平均の最低ラインにも達していません。この世界平均の20gに至るまでの6gの差を埋めるために、取り入れてほしいのがアーモンドです。アーモンドに含まれる食物繊維はレタスの10倍近く、ビタミンEについては、実にゴマの300倍にもなります(※)。現代人が必要とする栄養成分を含んでいるのがアーモンドなのです。

(※)日本食品標準成分表2020年版(八訂)・100gでの比較時

【古谷】健康に欠かせない栄養素を豊富に含んでいるアーモンドは、とても興味深い食材ですよね。食物繊維は、昼食で摂ることが少ない成分だということがビッグデータによって明らかになっています。昼は麺類だけを食べたり、サラダをつけてもごく少量だったり、身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。そうした中で、意識的にアーモンドを取り入れるのは良いチョイスだと思います。

――アーモンドからは効率良く食物繊維とビタミンEが摂れるんですね。1日どれくらいの量を目安に食べるといいのでしょうか?

【井上】私が推奨しているのは「1日25粒」です。多いように思うかもしれませんが、習慣化すればそれほど難しい量ではありませんし、丸ごと食べるだけでなく、料理に使ったり、アーモンドミルクで摂取したりすればより取りやすくなると思います。近年、老化の原因のひとつとして「糖化」という言葉を耳にするようになりました。終末糖化産物=AGEが老化を促進させる原因物質のひとつなのですが、我々の研究では、半年間適量のアーモンドを食べ続けるとAGEが約20%減少し、さらに便通が良くなることで体重も減るということがわかっています。

井上浩義氏。慶應義塾大学医学部教授。薬理学や生理学などを専門に研究しながら、食と健康に関する数多くのセミナーやメディアに出演。著書に『食べても痩せるアーモンドのダイエット力』(小学館)、『アーモンドを食べるだけでみるみる若返る!』(扶桑社)など。
古谷彰子氏。愛国学園短期大学准教授。管理栄養士。時間栄養学の視点を取り入れた栄養指導を行うと同時に、アスリートフードマイスター認定講師、発酵料理士協会特別講師としても教鞭を取る。著書に『時間栄養学が明らかにした「食べ方」の法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『決まった時間に起きて食べるだけ 10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社)など。

朝食と体の関係。日中のパフォーマンスがアップする。

――古谷先生は「不規則な食事」「食物繊維不足」「高カロリー食」「生活習慣病」というキーワードのうち、何に一番注目されますか?

【古谷】私は「不規則な食事」ですね。人間の体には体内時計というものがあり、正しく動くことで朝になれば目覚め、夜には眠くなるというリズムが生まれます。逆に体内時計がくるってしまうと生活は不規則になり、生活習慣病を招くきっかけとなります。一日の始まりに「これから活動するよ」と体のスイッチを押すことを、私たちは「リセットする」と呼んでいますが、リセットするためには、主に「太陽の光を浴びる」「バランスの良い食事を取る」「適度に体を動かす」という3つが効果的とされています。

例えば夜遅くに食事をしたので、翌日、食べ過ぎを気にして「朝は食べない方がいいかな」と思うような場合でも、リセットするためには朝食を食べて、逆に夕食を少なくすることが大切ですね。

【井上】朝は私たちの体にとって、とても大事な時間です。活性酸素という単語を耳にしたことがある方もいると思います。体を酸化させる成分として知られていますが、これに対して私たちの体からはコルチゾールというホルモンが分泌されます。朝起きて紫外線を浴び、眠りから覚めて呼吸数が上がると体が酸化するので、午前中はコルチゾールの濃度が高くなるのです。

いわゆる酸化=サビることにつながるわけですが、サビることから体を守るポリフェノールやビタミンEという抗酸化成分をたくさん含むのがアーモンドです。ですから朝アーモンドを食べることによって、午前中の酸化から体が守られるわけです。先ほど「1日25粒」と言いましたが、その一部を朝食べるだけでも効果があると考えています。

【古谷】朝にアーモンドの栄養を摂ることは、ぜひ実践してもらいたいですね。時間栄養学の研究では、朝食を摂ることで日中のパフォーマンスが向上するという研究結果も報告されています。しっかりと朝食を食べることが、心身ともに良い状態でのパフォーマンスにつながっています。

左側の茶色のバーが朝食を食べなかった被験者、右側の赤いバーが朝食を食べた被験者の心身の状態。明らかに朝食を食べることで、午前も午後も心身の状態が良くなるのがわかる。

朝食に取り入れるなら手軽に栄養が摂れるアーモンドミルク。

――忙しいビジネスパーソンの中には、朝食を準備するのが大変という方もいると思います。おすすめの食べ方はありますか?

【古谷】より手軽に、そして朝食向きということであればアーモンドミルクをおすすめしたいと思います。アーモンドを細かくすりつぶした方が、栄養素を吸収しやすいです。体の酸化を防ぐとされるオレイン酸の吸収率は、粒で食べるよりも細かくすりつぶした方が高まるので、井上先生がおっしゃるように酸化が気になる午前中にアーモンドミルクを飲むとより効果的ではないかと思います。

【井上】そうですね。私も、朝にアーモンドミルクを飲むという習慣をぜひつけていただきたいなと思います。ビタミンEが体の中に留まる時間は半日から1日とされていて、いずれ排泄されてしまいますから、毎日忘れずに摂取することがとても大事なのです。

【古谷】そのためには、アーモンドミルクをルーチンにすると良いですね。朝食や歯みがきのタイミングなど、毎朝のルーチンになっている事柄とくっつけるといいかもしれません。栄養バランスを考えつつ、手軽な朝食にするなら、グラノーラにアーモンドミルクを入れて食べるというのも良いと思います。

グラノーラを毎朝食べることで、起床時刻が平日11分、休日15分平均して早くなり、便秘も解消するという研究結果も報告されています。

【井上】グラノーラは水分が少ないので、アーモンドミルクを注いで食べるというのはとても食べやすくなって良いですね。私は以前から茶道を嗜んでいますが、抹茶をアーモンドミルクでたてると非常においしいんですよ。抹茶には茶カテキンも豊富に含まれていますから、アーモンドミルクとの相乗効果も期待できるので、おすすめです。

【古谷】アーモンドミルクはクセがないので食事に取り入れやすいですね。自分の生活スタイルに合ったかたちでアーモンドミルクを上手に取り入れて習慣化していただければと思います。

食べ応えのあるフルーツグラノーラに、コクのあるおいしさのアーモンドミルクは相性抜群。栄養バランスも理想的だ。